くらし 〔院長コラム〕一緒に考えましょう 健康のこと 医療のこと(95)

市民病院 院長
川井 覚

■救急医療について
救急医療は、急な病気やけがに迅速に対応するための医療で、命を守るためになくてはならないものです。
2次救急を担う市民病院は365日24時間救急医療に対応しています。昨年度は3,400件を超える救急車を受け入れ、休日や夜間に約7,000人の患者さんの治療をしています。
しかし、救急救命センターのように十分な設備やスタッフを確保することは難しく、すべての重症患者さんに対応できるわけではありません。夜間や休日に緊急で手術などが必要な場合は、専門医がかけつけて治療を行いますが、心臓や脳の疾患では1分1秒が生死を分ける場合もあります。病院内のスタッフの状況や救急外来、手術室の使用状況などから判断して、患者さんの命を救うために3次救急病院への搬送をお願いすることもあります。
救急医療が特に必要な生命に関わる心疾患や脳疾患は、何の前触れもなく起こることがあります。突然の発症に対する早期の治療は、患者さんの救命や後遺症を減らし早期の社会復帰に繋がることは間違いありません。救急車を呼ぶかどうか迷ったときは家族やかかりつけ医に相談されるといいでしょう。しかし、緊急性が高いと判断したときは、迷わず救急車を要請してください。
一方で、救急車は「緊急」に医療機関を受診するための手段ですので症状の軽い方がタクシー代わりに安易な要請をすることは望ましくありません。救急車の数は限られている中、出動件数は増加傾向にあり、高齢化の進展などにより今後も増えていくことが見込まれています。救急車の出動件数が増えることで、救急車が現場に到着するまでに要する時間も伸びてきており、一刻を争う事態が発生したとき、救急隊の到着が遅れてしまうおそれがあります。
冬場に入りインフルエンザやコロナなどの感染症が蔓延すると、肺炎を併発した入院治療を必要とする患者さんが急増します。また、脳卒中や心筋梗塞も寒い時期に発症することが多いとされています。適切に救急医療を利用していただくとともに、救急の現場で我々医療者や救急隊が患者さんを助けたい一心で日夜頑張っていることを頭の片隅に置いておいてくださるとありがたいです。