- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県大府市
- 広報紙名 : 広報おおぶ 2025年12月1日号
ありのまま、このまちで生きている。
子育てにも、自分の生き方にも、悩んで、迷って、笑って。
踏み出した一歩に「いいね」と声を掛ける誰かがいて、新しいつながりが紡がれていく。
そんな姿を見ると、ふと思う。「自分も何かできるかも」
あなたのやりたいこともきっとかなう。
■私たちのやってみたいこと
◆ありのまま このまちと生きる
平見舞子さん。14年前、結婚を機に大府に転入しました。
間もなく出産し、子育てに追われる日々。まちで出会う人々は、気さくに声を掛けてくれたり、進んで手助けしてくれたりして、温かい場所だと感じました。しかし拭えなかったのは、仕事も友人も無く、社会とのつながりが断たれたような不安や焦り。平見さんの子育てのスタートは、まちの人の温かさを感じる一方で、母としてここにいる自分が「これからどう生きたいのか」を考える時期でもありました。
こどもを連れて、児童センターなどのサークル活動に参加したとき、同じ立場の母たちがイベントを企画し、地域で活躍する姿に心を動かされます。自然体で誰かのために動く姿を見て「自分にも何かできるかもしれない」と感じたのです。
「やりたいことに真っすぐ」を実践する人たちとの出会いが、平見さんの生き方の原点となりました。
○仲間と踏み出す次の一歩
元々、体と心の健康に興味があり、保健体育の教員の経験もあった平見さん。友人たちと、命の大切さや家族の絆を伝える映画を上映したり、学校生活に悩むこどもや保護者の支援に関わったりします。
活動の拠点となった市民活動センター「コラビア」でも、価値観を共有できる仲間と出会います。親ならではの悩みを分かち合うだけではなく、関心のあることを同じ目線で話し合えました。
「大変なことも多いけれど、充実した毎日を送れています。背伸びせず等身大のままで、やってみたいことを仲間と話し、一緒に踏み出してみると、想像しなかった新しい世界が待っていました。このまちで子育てできて良かった」。
平見さんは、日々を周りの人に励まされながら、やってみたいことをこのまちで少しずつ形にしていきます。
◆こどもも母も自分らしくいられる居場所を
木漏れ日の差す森で、木に結んだ縄が地面を打つたび、落ち葉と笑い声が跳ね上がります。
豊かな自然の中で、散歩や遊びを通じてこどもたちが自分の色で輝く場所「NPO法人おさんぽやなないろ」。代表の近藤綾子さんが縄を回すと、こどもたちのはしゃぐ声が聞こえます。
「こどもがこどもらしく、ありのままにいられる居場所をつくりたい」と話す近藤さん。
「市内で保育士として働いていた時、自然の中で全力で楽しむこどもたちの姿に、はっとしました。土を触って、木の実を見つけて『これ好き』って思う気持ち。その瞬間を大切にできる場所をつくりたいと思ったんです」。
だからここでは、こども一人一人が主役。自分のやりたいことと向き合い表現することを一番大事にしています。
○母も、自分らしく
近藤さんは「お母さんにも、自分を見失わずにいてほしい」と話します。
「情報が多すぎる今、自分の子育てに不安を持つ方がとても多いんです。だから、ここでは『私もそうだったよ』『それで、大丈夫だよ』って言い合える時間を大切にしています。横に並んで、聞いてくれる人が近くにいると思えるだけで、表情が変わるんです」。
近藤さんは、母たちの居場所づくりにも取り組んでいます。
おさんぽやなないろの活動を通してつながった「岡田農園」で、母たちが野菜を手入れする「畑の母さん部隊」。収穫した野菜で簡単な料理をしたり、おしゃべりしたり。肩の力を抜いて「一人の女性」に戻れる時間を作っています。
ここは、こどもがこどもらしくいられる場所であり、母たちが思いを語れる居場所。近藤さんの思いに共感し、つながった人たちが、新しい輪を広げています。
〔INTERVIEW〕 片桐佳奈恵さん・瑛大ちゃん
こどもが、おさんぽで見つけたことや楽しかったことを教えてくれます。自然の中で遊んで、好きなことをする時間は、こどもにとってかけがえのない経験だと思います。
◆顔が見える関係を畑の中で
こどもたちでにぎわうサツマイモ畑。隣には大鍋たっぷりの温かいみそ汁が出来上がっています。
おさんぽやなないろの「小学生畑クラブ」。この畑を管理し、活動を支える岡田農園代表の岡田直美さん。「生産者の顔が分かる野菜を食卓へ」と、栽培期間中農薬・化学肥料不使用で野菜を育て、地産地消を広めています。「こどもが安心して食べられる野菜を作りたい」。最初は、ただそれだけの思いだったと話します。
転機は、市内での農業講座。「本格的な手順を学ぶ講座で。知識が付いたら野菜作りが面白くなって、『畑を持ちたい』と思うようになりました」。
○やりたい気持ちに応えるまちの『土壌』
とはいえ、土地・設備・経験の全て、ゼロからのスタートです。そんな時、地元農家の人が「うちの畑でやってみたら」と声を掛けてくれたのです。さらに、近くの農家の皆さんが作業を気に掛け、知識や経験を惜しみなく教えてくれました。
「やりたい」と言えば、挑戦させてくれる人たち。ここでの出会いが、岡田さんを就農へと後押ししました。
現在は3つの畑を持ち、飲食店への提供や対面販売などを行う岡田さん。畑の一部はこのクラブや畑の母さん部隊として、週末に親子が笑顔で野菜を手入れする、このまちならではの新しい農業の形となっています。
〔INTERVIEW〕 桑原寛文さん
農業講座で岡田さんと知り合いました。大府はまちの大きさがちょうどよく、イベントなどで交流する機会が多いので、顔の見える関係が築きやすいです。それに農業も身近な存在。こんなにたくさんのこどもが集まる農の取り組みは大府ならではだと思います。
