くらし やってみたいがかなうまち(2)

■どんな小さな布にも命を吹き込む
神社の境内、穏やかな日の秋のマルシェ。多彩な色や質感の生地で作られたバッグやポーチが、白いテントに並びます。オンリーワンの一品を手にする来場者との会話が聞こえてきます。
グラフィックデザイナーの加藤協子さんとカラーセラピストの岡田淑さん。2人の共通点は「生地が大好き」であること。知り合う前、加藤さんは服飾業界内で未利用の布が大量廃棄されていることに胸を痛め、その布を利用し、個人で活動していました。それぞれ2児の母である2人は、おさんぽやなないろで出会います。

○ハギレのハギレのハギレまで使い切る
話すうちに、お互いが育児や介護に忙しくしていること、生地に対して思いがあることが分かりました。「時間とスキルを補い合えば何かできるかも」と、布地の個性と色彩を生かし、余すことなく使い切ることを理念としたアップサイクルブランド「kaan to color(カーントカラー)」を立ち上げます。
布の買い付けから販売までを協力して行ううちに、繊維企業や生地の色分け作業を依頼する福祉施設など、関わりの輪が広がります。おさんぽやなないろと大学生との連携企画でスモック制作にも携わりました。
捨てられるはずの生地から価値を加えて生まれ変わった小物たち。マルシェで手に取った人の笑顔を見て、2人は話します。
「日頃忙しくて、ついおしゃれの優先度を下げてしまう女性に『私ってやっぱりかわいいじゃん』と思い出してほしいです。ありのままの自分を感じるきっかけになればと思って活動を続けています」。

◆今度は、私の番
以前からコーヒーを自宅で焙煎し、ドリップして持ち歩くほどの愛好家だと言う北林貴予さん。
5年前、家族と大府に転入しましたが、煙や匂いで近隣に迷惑が掛かるため、新居での焙煎を諦めていました。
ある日、こどものおもちゃを買いに入った市内の店で、店主にふとその悩みをこぼすと「ここは周りに民家がないから煙が出ても大丈夫。裏にスペースがあるから良かったら使って」と声を掛けられました。一人の顧客の問題に寄り添い、背中を押してくれたことがうれしかったと話します。そこから小さな焙煎機と向き合う日々が始まります。

○この豆を育てた人はどんな毎日を送っているのだろう
豆の表情と向き合ううちに、異国のコーヒー畑で働く人の姿が頭に浮かび、生産者が分かる豆を選ぶようになった北林さん。これらのコーヒー豆を広めたいという思いが強くなり、焙煎・販売する自社ブランド「かなふや」を設立します。
北崎町の丘陵地にある、社会福祉法人憩の郷が運営する「カフェライム」。北林さんの入れるコーヒーの香りが店内を包んでいます。
「当時学校を休みがちだった息子と、憩の郷のイベントに参加したことがきっかけです。そこでコーヒーの提供をしないかと声を掛けてもらったんです」。その後、カフェライムの創業メンバーとして、焙煎を任せたいと誘いを受けます。「もっと焙煎ができる」という直感と同時に、あの時自分を応援してくれた店主のことを思い出します。「今度は私の番だ」。
「まちの人との出会いがなかったら、コーヒーはきっと趣味のままでした。今は、自分の好きなことを誰かと共有できるのが本当にうれしいです」。
このまちで、たくさんの人がつながりあって、自分のコーヒーを応援してくれる。北林さんの入れたコーヒーがまちの人を結び、彼女を導きます。

■それぞれの思いが重なり、まちの力へ
こどもと共に、おさんぽやなないろに集まった母たち。
公園で顔を合わせ、イベントで声を掛け合い、子育ての悩みを話すうちに、それぞれが思いを語り合い、次第に、自分たちが集まれば何かできるかもと感じ始めたのです。
ある日、近藤さんがフェアトレード※という言葉を口にします。
着たり、食べたりするものが、どこで、どんなふうに作られているのか。
そこに思いをはせ、購入するときにほんの少し考えてみてもらいたい。
外国の話のようだけど、普段買うものでも大切なことだよね。
顔を見合わせた母たち。
「私たち、一緒なら、できるんじゃない?」
自分たちが楽しみながら、こどもたちの未来のためにできることを。
徐々に思いがまとまっていきます。
一つの共同体として、歩み始める彼女たち。
まちを元気づける活動から一歩ずつ、未来へつなげていこう。

◆SINCE 2021.4.1
おおぶフェアトレードタウン推進委員会誕生
委員会の目的は、フェアトレード商品の販売と啓発を通して、地球や人を大切にするまちをつくること。活動は、お互いの事情に合わせ、動ける人が動く。
母たちだからこそできる、背伸びをしない自然体の市民活動が始まります。
※フェアトレード 経済・労働環境・自然環境に配慮した、生産者と購入者の対等な取引のこと。

○廃棄されるバナナをなくそう
「ぽこぽこバナナPROJECT」
メンバーの志知好恵さんを中心に、規格外で廃棄されるフィリピン産バナナを流通させる取り組みを始めました。

〔INTERVIEW〕 志知好恵さん
私も何かできるかもと思い、メンバーになりました。バナナは果肉から茎まで、料理や紙作りなど工夫次第で幅広く活用できる面白い素材です。協力してくれる学校やマルシェなどがたくさんあるので、今後の広がりが楽しみです。