- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県豊明市
- 広報紙名 : 広報とよあけ 令和7年11月1日号
◆センブリ~姿を消しゆく薬草~
落葉樹の葉が赤や黄色に色づき始める11月、日当たりの良い草地にセンブリが開花します。古くから胃の運動や消化を活発にする健胃薬として有名な薬草で、布袋に入れて湯に入れエキスを振り出すのですが、千回振り出してもまだ苦いことから「千振(せんぶ)り」の名前がついたと言われています。
花は白く2cmほどの大きさで、中心にあるめしべやそれを取り巻く蜜腺※が黄色っぽく、黒っぽいおしべの先端とともにアクセントになっています。苦い薬の花とはとても思えない清楚な美しさで、毎年出会いを楽しみにしています。
ただ残念なことに、市内にはセンブリはほとんど見られなくなってしまいました。丘陵地は樹木の繁茂により地面まで日が当たる場所が著しく減少し、日が当たる場所も背の高いササなどに覆われてしまい、草丈が10~20cmほどのセンブリには生育できる場所がありません。名古屋市でも同様で、今年公表されたレッドデータブックには、現存する生育地はほとんどない、と記されています。
わずかに残っているセンブリの生育地を何とか残そう、広げようと毎年草を刈っていますがなかなか増えてくれません。春のスミレとともに里山をつつましく彩るこの花に、いつまでも豊明で可憐な花を咲かせてほしいと願っています。
※蜜腺(みつせん):蜜を分泌する小さな粒
豊明市史(自然)執筆員 浅野 守彦
※写真は広報紙30ページをご覧ください。
