- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県津市
- 広報紙名 : 広報つ! 令和7年11月号
◆語り継ぐ軌跡 地域の宝を明日へ
汽笛がこだまし、煤(ばい)煙を吐き出す黒い巨体が近づいてきた―「うれしくて、たまらなかった」。初めて名松線に乗った90年前の記憶。炭の匂い、車輪のきしみ。五感に刻まれた色あせない当時の情景。90歳を過ぎた今も現役ガイドとして、終着駅を訪れる人に当時の空気を手渡していく。
今年で全線開業90年を迎える名松線は、松阪駅と伊勢奥津駅を結ぶ全長43.5kmのローカル線。戦中・戦後は、通勤、通学の人に加え「物々交換で暮らしをつなごうとする街からの買い出し客が、美杉の野菜や米を抱えて乗車しており、車内はいつも満員だった」と結城さんは懐かしむ。
名松線の歩みは、車社会の到来、一次産業の衰退などの社会情勢の変化や、度重なる自然災害による廃線危機と存続活動の連続だった。特に感慨深いのは、平成21年の台風被害により一部区間がバス輸送となったことで始まった全線復旧を求める署名活動だ。「多くの方の支援のおかげで1カ月弱で11万筆以上集めることができた」。名松線を愛する人の声に、JR東海や行政機関が呼応し、6年半後再び伊勢奥津駅に車両が入ってきた時、目頭が熱くなった。
「乗客が記憶にとどめた物語が90年後にも語られるよう後世に残したい」。そんな未来への思いを胸に名松線の軌跡と魅力を語り続けていく。
ボランティアガイド 結城(ゆうき) 實(みのる)さん
1932年美杉町上多気生まれ。三重大学を卒業し教職に就く。定年後は、地域の要職などを担う傍ら、2008年仲間と共に地域づくり団体を設立。翌年「名松線の全線復旧を求める会」の会長として復旧活動を先導。
・この季節のお薦めは海を渡る蝶アサギマダラ観賞
・毎週月・金は教え子たちとのグラウンドゴルフ
※詳しくは本紙をご覧ください。
