くらし 特集 食べられる天然記念物 蓮台寺(れんだいじ)柿(1)

私たちが住む伊勢市には、「食べられる天然記念物」があることを知っていますか。それは、伊勢市の特産物「蓮台寺柿」です。
今年は猛暑が続き、柿への影響が心配されましたが、9月下旬に無事に初出荷を迎えることができました。
そんな秋の味覚、蓮台寺柿には、たくさんの魅力がある一方で、課題も抱えています。今回の特集では、蓮台寺柿を栽培する生産者の思いや苦悩、そして、これからも後世へ蓮台寺柿を残していくための取り組みを紹介します。

蓮台寺柿の歴史
今から130年前の明治28年に編さんされた「神都名勝誌(しんとめいしょうし)」(神宮司廳(しちょう))に、蓮台寺柿に関する記述があることから、それ以前には、既に蓮台寺柿が栽培されていたことが推察できます。さらには、地元では約350年前から栽培されていたという言い伝えもあるなど、古い歴史があります。
昭和に入り、品質の高さや特徴ある形が評価され、本格的に栽培されるようになりました。そして、その由緒ある歴史や特徴的な形状から、昭和33年に市の天然記念物に指定しました。

名前の由来は、かつて存在したお寺の名前
伊勢市勢田町の南部山間地には、神宮祭主大中臣永頼(おおなかとみのながより)が建立したと伝えられる鼓嶽山(こがくざん)蓮台寺(明治2年廃寺)というお寺があったため、この地域で栽培されていた柿は、「蓮台寺柿」と呼ばれるようになりました。

蓮台寺柿の特徴
形は、小判型、菊型や多角形のものなど、さまざまです。
不完全甘柿に分類され、9割ほどが渋柿(しぶがき)であるため、渋抜きをしてから出荷されます。渋抜き後は、大変甘く、なめらかな食感です。

■インタビュー
蓮台寺柿を未来に残したい。
「蓮台寺柿」を守り続けている生産者の一人、大西信孝(おおにしのぶたか)さんに、柿作りの日々や思いについて語っていただきました。

JA伊勢蓮台寺柿部会長
大西 信孝(おおにし のぶたか)さん

きっかけは「伊勢ならではの味を残したい」
私が蓮台寺柿の栽培を始めたのは40歳の時で約35年間続けています。現在は計8反(たん)(約8千平方メートル)の畑を管理しています。もともとは椎茸(しいたけ)栽培をしていましたが、「この地域にしかない蓮台寺柿の味を、未来に残していきたい」という強い思いが募り、本格的に柿栽培を始めました。両親も柿畑をしていたため、幼い頃から柿の栽培技術は身近にありました。

丹精込めた一年間の作業
蓮台寺柿を作るために、1年を通して、ほぼ毎日、妻と二人三脚で、作業をしています。
冬の1月から3月は、剪定(せんてい)の時期です。この時期に、樹高(じゅこう)を下げたり、混み合った枝を整えたりします。これは、実が高くなりすぎると収穫時に脚立などを使うことになり、作業が大変になるのを防ぐために必要なことです。
春から夏にかけての4月から9月は、雑草の管理や害虫から大切な実を守るための消毒作業を行います。
そして、5月中旬から7月中旬にかけては摘果(てっか)作業。実がなり始めたら、約7割の若い実を落としていきます。この作業は、残された実の一つ一つに栄養を集中させ、大玉でおいしい蓮台寺柿に育てるための非常に重要な工程となります。このようにして、1年中丹精込めることで、まろやかな甘みを持つ蓮台寺柿が生まれます。

生産者減少の危機感
この味を維持していく上で、生産現場は難しい状況にあります。蓮台寺柿の生産者数は、最盛期(約20年前)に比べて約半数にまで減少しています。また、現役で栽培を続けている生産者の中心は70代から8代前半です。毎日、畑での作業があるため、他の仕事との兼業は難しいのが現状です。若い人たちにもっと蓮台寺柿のことを知ってもらいたいと、市内の小学生の子どもたちに蓮台寺柿について学んでもらうなどの活動も続けています。

「おいしい」の一言が何よりの励み
柿作りを続けていて、一番うれしく感じるのは、やっぱり食べた人たちからの声ですね。収穫して販売した柿を、「おいしい」と言ってくれること、「毎年楽しみにしてるよ」といった声をいただくことが、来年もまた頑張ろうという何よりの励みになります。

問合せ:農林水産課
【電話】21-5645【FAX】21-5651