くらし 特別対談 どうする?地域の担い手確保(1)

5月に第5次地域福祉(活動)計画を策定。行政や専門職、そして市民がともに地域共生社会を作り出していく見取り図を描く計画です。北川市長と名張市地域福祉推進協議会の永田会長が、地域共生社会の維持・拡大に不可欠な地域の担い手確保などについて意見交換しました。

▽市長 まちづくりに関わる若者や学生などが参加したワークショップと市民総選挙により、令和5年度に、市民発のブランドロゴ「なんとかなるなる。なばりです。」が誕生しました。これは、シティプロモーションの取組の一環です。お互いが支え合う「地域共生社会」を表現する名張らしいロゴで、とても気に入っています。

▽永田 「なんとかするなばり」ではないのがいいですね。

▽市長 ロゴについては、「なんとかなるとはいい加減、なるようになるなんて無責任、行政がなんとかするなら分かるけれど」といった声も。このロゴは、生きづらさを感じてる人たちに、名張にいたら、名張に来たら、助けてくれる人がいるよ、また、みんなで力を合わせて「なんとかなる」未来をつくっていこうという強いメッセージを発しているんです。

▽永田 行政が「なんとかする」だと、住民は完全に受け身になってしまう。もちろん、行政の「なんとかする」という下支えも必要ですが、周りの助けもあるから「なんとかなる」ということですよね。

▽市長 ワークショップでは、人と人のつながりが強くて、あたたかくて、支え合えることが、名張の魅力であることが共有されました。地域共生の取組が若い世代にも浸透していたんですよね。

▽永田 市民の皆さんと一緒になって共生のまちを築き上げてきたことが、このロゴに表れてきたんだと感じますね。一方で、計画策定委員から課題として出されていたのが担い手不足。団塊世代をはじめとする地域共生社会の担い手が高齢化してきています。

▽市長 地域の担い手確保に特効薬はありませんが、若い世代のアクションが広がっていくことで、他の世代への波及効果を生んでいくことを期待しています。

▽永田 福祉とは関係なかった人が、自分の興味・関心で動く、楽しいから動く、感性で動く。こうした視点も大切です。例えば、自分の活動を手伝ってほしいという保護猫活動をしている人がいて、たまたま引きこもりで猫好きな人がいたのでマッチングしたところ、どちらにも喜ばれたという事例も。今やっていることや楽しんでいることを福祉の活動に重ねていけるといいですよね。

▽市長 いろんな取組をかけ合わせていくような仕掛けをしていく必要があるのかもしれません。

▽永田 本計画では、支援の受け手が支え手にもなれるとしています。そんな社会を創っていくためには、人と人が出会う機会や場が必要。多様な人たちが出会うことで化学反応が起きて、新しい取組が生み出されます。福祉だけではなく、いろんな分野から多様な人がつながり、楽しんで取り組めるようになればいい。それに、「自分とつながっている人だから、なんとか助けたい」という気持ちも生まれてくると思うんです。

▽市長 シティプロモーションの目的は、自発的・主体的に動く「活動人口」を増やすこと。地域の魅力を多く挙げられる人ほど、地域のために何かしたいと思う傾向にあるようです。まずは地元愛を高めながら、人と人とのつながりをつくっていきたいと考えています。

▽永田 シティプロモーションと地域福祉の取組を掛け合わせながら進めていけるといいですよね。人口が減少していく中、持続可能な取組としていくためにも、ソーシャルキャピタル(人々の健康や幸せを促進するための社会的なつながりや信頼関係)をいかに築いているかが求められます。

▽市長 人と人のつながりが強くて、温かいところが名張の最大の魅力です。これを強固なものとしていくことで、地域福祉の向上につなげていきたいですよね。

▽永田 ただ、地域づくりを20年やってきて、疲弊してきている面もあると思います。いかに世代交代をしていけるかが重要。いろんな人に、いろんな方法で活躍してもらうのもいいと思いますよ。

▽市長 いろんな人がいろんな思いで活動をしていますから、関わり方も多様であるといいですよね。

▽永田 別の自治体で、ボランティアセンターの登録者が増えているという話を聞いて驚きました。生活困窮などの相談に対応しながら、得意なことを聞くそうです。料理が得意と聞くと「今度こんなことをしませんか」と話し、ボランティア登録をしてもらうのだと言います。助けを求める一方で、自尊心もありますから、「得意なことがあれば、助けてくれないかな」と聞いてみるのもいいかもしれません。得意なことの話をするときは、皆さんすごく楽しそうな顔になるのだそうですよ。

▽市長 人の役に立って「ありがとう」といわれると人間はうれしいもの。得意なことを生かしながら、みんなで支え合うことができればいいですよね。

▽永田 同志社大学の学生たちも地域で活動していますが、なかなか続かないことも多いようです。地域の人から「地域活動とはこういうもの」「こういう気持ちでやらないと」と、一生懸命に話をしてくれるのですが、ついつい説教になってしまって、楽しくないらしいんです。若い世代を引き込むのであれば、「なにかアイデアはない?」と聞いてみたり、学生たちが主役になっているように演出してみたりと、活動に関わってもらう手法を工夫する必要があるのかもしれません。

▽市長 国の職員に「なぜ名張は地域づくりに成功したのか」とよく質問されます。都市内分権を進める中、住民には転入者も多く、多様性のある人材が地域にそろっていたことなどを挙げるのですが、「全国でそのようなところはたくさんありますよね」となるんです。

▽永田 名張には、おもしろくて、飾らない人が多いからかな。人懐っこさもあって、人のために何かしようという気持ちが強い。

▽市長 もともと名張で住んでいた人と大阪から来た人とが混ざり合って、ちょうどよくなったのかな。まちの保健室のキャッチコピーも「マイルドにおせっかい」ですから。