- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県いなべ市
- 広報紙名 : いなべ市情報誌 Link 2025年8月号(vol.261)
■記憶から、未来への伝言
戦争をくぐり抜けた人々の言葉には、平和を願う強い思いがこもっています。
あの戦争の記憶の中から、未来への伝言をお聞きしました。
◇戦争は絶対にしたらあかん
岡本茂樹さん 104歳(北勢町其原)
▽死を覚悟していたあの頃
岡本さんは、戦時中に三重師範学校(現在の三重大学)を卒業し、1年間小学校勤務した後に師範徴兵として広島県の大竹海兵団に入団しました。そこで戦艦伊勢に配属となり、乗組員として火薬庫長に就きました。弾薬庫は船の底のところにあり、分厚い鉄板に囲まれていたため、戦艦が被弾したら「まず助からないだろう」と覚悟しながら乗艦していたそうです。ポタン、ポタン、と落ちる水滴を飲み、のどの渇きに耐えながら任務に当たっていました。
一度、広島で訓練を受けているところに、弟が会いに来てくれたことがあります。お互いに最期を意識した再会だったそうです。
▽広島で迎えた8月6日
昭和20年8月6日、広島市に原爆が投下されたときに、岡本さんは大竹海兵団練兵所にいました。閃光を見た後、間もなくすごい爆風を受けたそうです。2、3日後に軍の命令で広島市に救助に向かい、すさまじい光景を目にしました。
その後、兵舎内のラジオで玉音放送が流され、終戦を迎えたときは「やっと終わったんだ」という思いになったそうです。
▽遺骨も届かなかった弟の死
戦後、岡本さんは弟が21歳でフィリピンで戦死したことを知ります。弟の戦死の知らせに白い箱を渡されましたが、中には紙が入っていただけでした。母は弟の死を信じられなかったのか、毎日、麻生田駅まで迎えに行きました。母のその姿を見るのがつらかったそうです。戦後、教職に戻った岡本さんは、常々「戦争は絶対にしたらあかん」と周囲の人たちに話しました。
◇平和を真剣に考えるとき
因慶紹さん 88歳(大安町大井田)
全校生徒や婦人会などの大勢の人に、「万歳」と梅戸井駅で見送られた父。当初、父は中国に派遣されましたが、昭和19年に沖縄へ転属に。その知らせがあった時は、家族で中国よりも距離が近くなったことを喜びました。でも、激しい沖縄戦で、父はガマ(洞窟)の野戦病院で亡くなったそうです。
終戦30年目に、沖縄での遺骨収集事業に参加しました。20日間かけての遺骨収集では、沖縄戦の悲惨さに言葉が出なかったです。鉄砲の弾や手りゅう弾があっても構わずに、そこら中にある遺骨に手を伸ばして無我夢中で収集しました。摩文仁(まぶに)の丘で行われた慰霊祭で、同行した青年が、拾った頭蓋骨を胸に抱えて放そうとせず、「お父ーさーん!」と叫ぶ姿を目の当たりにして、こみ上げるものがありました。
平和について真剣に考えるために、市の郷土資料館でもいいし、広島や沖縄の資料館などに行ってほしいです。戦争があったことを、忘れないでほしいです。
◇戦争は家族の絆を断つ
日下正さん 80歳(大安町片樋)
父は昭和18年12月に招集を受け、丹生川駅から見送られ京都の駐屯地へ。そんな中、当時1歳の兄が病気で亡くなりました。そのことを母は、開拓勤務部隊に編入されて駐屯地で訓練をしていた父には伝えませんでした。最後の面会の時に、伯父から息子が亡くなったことを知らされた父は、その場で泣き崩れたそうです。その父は、昭和19年7月にサイパン島で34歳の若さで戦死しました。その後生まれた私は、父の顔を知りません。母が父と一緒に居たのは、3年だけ。母は、残された広い田で農作業をしながら私を育て、64歳で亡くなりました。
若い軍服姿の父の遺影、その隣には白髪交じりの母の遺影が掲げてあります。二人の不釣り合いな姿を見ると悲しみがこみ上げてきます。戦争は家族の絆を絶ちます。悲しみを生む戦争を、絶対にしてはいけません。
◇戦後80年目の戦没者慰霊祭
5月3日(土)、北勢町の麻生田野戦没者記念碑前で戦没者慰霊祭が行われました。「平和の鐘を鳴らす会・いなべ」と神社庁員弁支部が合同で開催。
碑には、日清戦争・日露戦争・太平洋戦争などの戦没者2,024人が祀られています。
参列した遺族の皆さんは、亡くなった家族へ思いをはせ、静かに手を合わせていました。
◇平和の鐘を鳴らす会・いなべ
戦後80年が経ち、戦没者の遺族の高齢化が進んでいます。次世代に平和を引き継ぐため、「いなべ市遺族会」から「平和の鐘を鳴らす会・いなべ」に名前を変更しました。
理事長の若松芳弘さんは「昨年、戦没者のお孫さんがこの会に入ってくれました。さまざまな年代の人と協力をして、戦争をしない世の中にしていきたい」と話してくれました。
《幻想的な空間で平和を再確認 竹あかりの会》
慰霊碑を囲むように並べられた竹あかりを見て、平和への思いを深めるイベントです。
日時:8月23日(土)17:00~
場所:麻生田野戦没者記念碑前
主催:平和の鐘を鳴らす会・いなべ
問い合わせ:【電話】090-3157-2530