文化 シリーズ 福知山の文化財 収蔵資料紹介(88)

■「『小学国語読本(しょうがくこくごとくほん)』巻四」
所蔵:日本の鬼の交流博物館

日本の鬼の交流博物館では絵本や文庫本など様々な書籍を収蔵しています。その中には昔の教科書もあります。
戦前の日本で使われていた教科書は、文部省が編集した国語の国定教科書で、「国語読本」と呼ばれていました。『小学国語読本』は昭和8年から昭和15年まで使用されていた尋常小学校(初等科)用の教科書で、全12巻、1学年2巻ずつ使用していたようです。1巻の始まりが「サイタ サイタ サクラガ サイタ」であることから「サクラ読本」とも呼ばれています。
博物館に収蔵されている『小学国語読本』巻四は、昭和10年に発行されたもので、「富士の山」や「かぐやひめ」、「白兎」、「北風ト南風」、「羽衣」などのよく知られた物語とともに「大江山」が収録されています。「大江山」は大江山に棲み、都で悪さをする鬼・酒呑童子を山伏に扮した源頼光たちが退治する物語です。低学年向けの教科書ですが、ひらがなだけでなく、難しい漢字も使われています。また、カラーの挿絵が入っており、頼光たちが洗濯をする女性に出会う場面や、酒呑童子と頼光たちが酒を酌み交わす場面、頼光たちが退治した酒呑童子の首を都へと運ぶ場面が色鮮やかに描かれています。
大江山には酒呑童子伝説が伝わっており、古くから絵画や謡曲、浄瑠璃や歌舞伎などの題材となってきました。当時は全国の小学生が同じ教科書を使っていましたので、教科書を通して大江山の名前や酒呑童子伝説が広く知れ渡ったことでしょう。読み物としても大変面白いものです。

問合せ:文化・スポーツ振興室
【電話】24-7065【FAX】23-6537