- 発行日 :
- 自治体名 : 京都府木津川市
- 広報紙名 : 【京都府木津川市】広報きづがわ 2025年9月号
■ベーカー嚢腫
中島整形外科 中島慎一郎(なかじましんいちろう)
膝の裏側が腫れて、膝を曲げる際に圧迫感や違和感を生じる病気にベーカー嚢腫があります。
1877年にイギリス人医師のベーカー(William Morrant Baker)が膝の裏に液体がたまってしまう病気を報告し、現在はこれをベーカー嚢腫と呼びます。
ベーカー嚢腫は、膝の後ろにある滑液包といわれる袋に、関節液が関節腔から流れ込んで溜まることによりできる腫瘤です。変形性膝関節症に合併して起こることが多く、50歳代以降の女性に多くみられます。滑液包は腱や靭帯の周囲に存在して摩擦を減らすことで組織を滑らかに動かす役割を果たしており、膝関節周囲にはもともと10数個の滑液包があるといわれています。大きいベーカー嚢腫は握りこぶし大の大きさとなり、皮膚の上からでも卵ほどの膨らみが見て取れます。まれに、大きくなりすぎたベーカー嚢腫が、圧がかかったときに破裂することがあり、その際はふくらはぎに腫脹や痛みを生じます。
ベーカー嚢腫があったとしても、無症状やサイズが大きすぎない場合には経過観察をおこないます。ただし、ベーカー嚢腫が大きくなり症状が出る場合には治療をします。基本的な治療は針を刺して水を抜く処置(穿刺)ですが、穿刺して一時的に小さくなっても、関節液が再度流れ込んでくることで早期に再発することが多いです。ベーカー嚢腫が巨大で、神経や血管を圧迫して下肢の痛みやしびれを伴う場合は手術をおこなうこともあります。ベーカー嚢腫の袋を摘出し、関節腔との交通路を塞ぐ処置をします。
ランニングなどで膝の屈伸動作をやりすぎることで、膝の裏の滑液包が炎症を起こして腫れることもあります。このようなオーバーユースが原因の場合は、運動を控え安静にしていると、自然に軽快していきます。