くらし 区制100周年記念 みなとの100年、みんなの物語(1)

~これまでもこれからもこの地域(まち)と~

港区には、地域ごとに紡がれてきたまちの物語があります。区制100周年を機に、その過去と今を語り合い、これからの未来をともに思い描くインタビュー企画をお届けします。

■市岡地域
港区中央部にある市岡エリア。区役所や警察署も置かれ、区の中心的なまちのひとつです。地名は、江戸時代に市岡与左衛門らが開発した「市岡新田」に由来するといわれています。今回は、市岡エリアで地域ネットワーク委員会会長を務める藤田さんに、地域見守りコーディネーターの溝口さん、市岡地域活動協議会の横田会長の同席のもと、お話を伺いました。

◇北海道から大阪へ、地域と歩んだ30年
藤田さんの出身は北海道。結婚を機に、大阪市港区に移り住みました。夫の祖母が婦人団体に参加していたことがきっかけで、いつの間にか地域活動に関わるようになったといいます。PTA、地域振興町会の女性部長、民生委員などを歴任し、活動歴は約30年に。そして昨年から、地域ネットワーク委員会の会長を務めています。さまざまな役割を担うことについて藤田さんは「やってくれへんか?と言われたら、はいよ!っていう感じなんです(笑)」と話します。「子どもの頃から人のお世話をするのが好きで。多分、性分なんだと思います」。
その言葉どおり、敬老の名簿を作る際は一軒ずつ訪ね歩いたり、台風の時は近所の一人住まいの方を自宅に避難させたり、民生委員の見守り対象の方を毎月訪ねたりと、地域の人々への気遣いがとても細やか。それも、特に意識をしているわけでも、義務感でもないと言います。「民生委員として、というより、普段のお付き合いの延長ですね」。

◇「楽しみながら一致団結」が市岡らしさ
そんな藤田さんについて、溝口さんは「誰よりも地域を想い、地域をよく知っている方」と評します。「困りごとのある方をいきなり訪ねても、話はしてもらえません。藤田さんは、少しずつ顔なじみになって、本音を話してもらえる関係性を地道に築いてこられたことが、本当にすごいと思います」と話します。
藤田さんを「頼りになるパートナー」と語るのは、30年の付き合いになるという横田会長。市岡地域は団結力が強く、みんなで力を合わせて地域を良くしていこうという気持ちがあると言います。けれども一方で、マンションが増えて町会への加入が減ったり、空き家や民泊が増えたりという課題も。若手が少なく、世代交代が進まないという状況もあると言います。それでも今年は6年ぶりに盆踊りを開催するなど、地域の人たちが顔を合わせ、つながれる機会を大切にしています。「冗談を言いながら、楽しく活動できるのが市岡のいいところ。これからもみんなに喜んでもらえることをやっていこうというのは、藤田さんともいつも話してますね」。

◇「ありがとう」と言われなくても
これからの活動について「まだ委員長になったばかりなので、安心してもらえるように努めていきたいですね」と藤田さん。長年にわたって地域活動に力を注いできた理由とやりがいを伺うと、「ありがとうと言ってもらえたらうれしいですが、たとえ言われなくても、自然とやってしまうんです。おせっかいな性分ですから」と笑います。
実際、13年間続ける子どもたちの登下校の見守りなど、日々の関わりも欠かしません。地域活動は、藤田さんにとって生きがいであり楽しみそのもの。誰もが安心して暮らせる、明るく元気な市岡を目指して、藤田さんや横田会長、溝口さんの取り組みはこれからも続いていきます。