しごと 【特集】城東区のきらりヒト

■区内できらり輝く活躍する人を紹介します
山本義行(やまもとよしゆき)さん
BASE-FURNITURE-(べーす ふぁにちゃー)
木工教室 and 創作家具

令和5年度大阪府優秀技能者表彰(なにわの名工)を受賞された山本義行さん。
木工の伝統技術を未来へとつなぐ〝なにわの名工〞に技術継承への想いと挑戦を伺いました。

◇運命を変えた転落事故と新たな出発
もとは建築美装の職人としてキャリアを積んでいた山本さん。ある日、現場作業中に高所から転落し、全身数ヵ所も骨折する重傷を負います。高所への恐怖心は残らなかったものの、現場に復帰したら、また無茶をしてしまうのではないかと懸念し、職人の道を断念。「入院中、今後の人生をどうするか考えました。それでも“木” に触れることは大好きでしたので、退院後は、これまで趣味として続けていた日曜大工に本気で取り組んでみようと決めました」と語る山本さん。
退院後はホームセンターの工具部門でアルバイトを始めます。ちょうどその頃、DIYブームもあり、店頭でお客さんにアドバイスをするうちに評判に。この経験から、自分の技術を人に教えることの喜びを実感した山本さんは、木工教室を開設することにします。
最初は、鶴見区で小さな教室を開いていましたが、徐々に生徒数が増えたことから、城東区の古民家を改築し移転。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の影響で、教室が開けない時期もありましたが、山本さんは「その分ゆっくり準備ができた」と前向きに捉えていたそうです。

◇幅広い年齢層と柔軟な学習指導の木工教室
建築美装の職人から木工職人へと転身した山本さん。現在は、木工教室とオーダーメイドの家具を中心とした木工製品を製作しています。最近では、企業からの注文で大阪・関西万博に出展するためのパイプオルガンを手掛けました。
山本さんの教室は、子どもから高齢の方まで幅広い年齢層を受け入れており、子どもも大人も同じ教室で一緒に作業を行います。子どもは大人の技術を間近で見ることができ、大人は子どもの豊かな発想に刺激されるそうです。教室では、まず道具の扱い方をしっかり学び、初めに作るのが自分の道具箱。その後、いくつかの課題をこなしながら、道具の使い方を身につけ、技術を磨き、自分の作りたいものを製作していきます。「本人が本当にやりたいと思った時に来てもらうほうが、技術の習得も早く、何より楽しく学ぶことができる」との考えから、受講者自身のペースに合わせて教室の開講時間内であればいつでも参加できるようにしています。
これまでの受講生には、からくり箱に魅せられてサラリーマンから箱根のからくり箱職人に転身した方や、終活のために自分のための仏壇を製作した最年長の84歳の方などがいらっしゃるそうです。「人生の転機となるきっかけの場になっていることにやりがいを感じています」と山本さん。自身も人生を変えた経験があるため、この教室に通う人たちを応援する気持ちにあふれています。

◇国家資格の取得指導への取組み
この木工教室では、全国でも珍しい家具製作技能士(国家資格)の取得指導も行っています。一定レベルの技術を持った職人であることを証明する重要な資格ですが、全国的にこの資格の取得指導を行っている教室は少なく、他府県からも山本さんの優れた技術、特に伝統的木造工法による仕口(しぐち)・継手(つぎて)を習うために、多くの受講者が訪れるほど。また、企業からの依頼で新入社員の研修を受け入れることも多く、社外研修所としての役割も果たしています。

◇少年院での技術指導という社会貢献
家具製作技能士1級取得後、職業訓練指導員の資格を取得し、さらにものづくりマイスターとして認定された山本さんは、ものづくりマイスターの協会を通じて少年院で技術指導講師をしたことがきっかけで、いまでも月1、2回のペースで技術指導を行っています。
山本さんは、少年たちがけがをしないように、技術指導はもちろんのこと、特に正しい道具の使い方を教えたことで、今まで多かった作業中のけがが大幅に減少したそうです。この活動の中で、全国の少年院のクラフト大会で2位入賞を果たした少年の存在に大きな達成感を得たと語ってくれました。また、商業施設で開催される刑務所・少年院作品の展示販売会では、ほぼ初日で完売するほどの人気で、少年たちにとって大きな励みとなっているようです。限られた道具の中で黙々と手作業を続ける少年たちの姿を見て、「何らかの形で彼らの人生に良い影響を与えられれば」という思いで指導を続けられています。

◇区民の皆さんへ
ものづくりを通じて得られる達成感や体験、喜びは、世代関係なく人生を豊かにしてくれます。「木工に限らず、やりたいと思ったことには勇気をだしてチャレンジしてほしい。そして自分の可能性を信じてほしいです」と、笑顔で語る山本さんでした。
困難な状況でも前向きに捉え、笑顔を絶やさず新たな可能性を切り開いた山本さん。
そして、日本の伝統技術を未来につなぐ山本さんの挑戦は、これからも続いていきます。

◆伝統の木工技術
~仕口・継手~
釘などを使用せずに木材を接続する、日本の伝統的な手法です。
昔から寺社建築等に用いられています。

仕口…2本以上の材を角度をもって組み合わせること。
継手…2本の材を縦方向に継ぎ足すこと

◇仕口の例
両面腰欠き木ねじ締め
通し2枚ほぞ接ぎ
両面留形包み5枚あり組接ぎ
5枚組接ぎ

◆教えて!山本さん「木製まな板の手入れ方法」
木製まな板は、横ではなく縦に干すことで水分が抜けやすくなります。また、急激な乾燥を避けることで反りや割れを防ぎ、長く使えます。

◆BASE-FURNITURE- 木工教室 and 創作家具
営業時間:9:30~21:00
定休日:日・水(月によって異なります)
ところ:東中浜2-7-24
木工教室などの詳細は、ホームページで紹介しています!

問合せ:【電話・FAX】6180-8366
【HP】https://base-furniture.com