くらし 特集 高槻フルーツクラフト(1)

【ブルーベリー×クラフトサケ】
●高槻フルーツを新感覚の酒へ
米を原料として清酒の製造技術をベースにフルーツやハーブなどを加えて造るクラフトサケ。
高槻の農家と連携した酒造りを目指す醸造家は、高槻初のブルーベリー狩りの観光農園でコラボを申し出た。
声をかけられた2代目は、生食以外の可能性を模索していた。

〔Blueberry〕
・高槻産ブルーベリー
6~8月中旬に楽しめる観光農園がメイン。平成21年に開園した西面(さいめ)の「たかつきベリーファーム」に続き、上牧の「ほのぼの農園」が栽培を開始。令和8年度には樫田に「北摂ブルーベリーガーデン」が誕生予定

◇地元農家と醸す高槻の新しいおいしさ
・父が興した「たかつきベリーファーム」の責任者を今年引き継いだ横山智希さん(右)と、全国初の“団地酒蔵”で高槻発のクラフトサケを造る足立農醸の足立洋二さん(左)
※詳しくは本紙をご覧ください。

ブルーベリー農園の2代目として就農して2年目、横山さんは客として来園した足立さんにブルーベリーを使った酒造りを提案された。当時、足立さんは高槻に大阪初のクラフトサケ醸造所を設立したばかり。「酒どころとして知られた高槻は水がいい。伝統あるこのまちで地元の農産物を使った酒造りをしたいと思っていました」。
父も地元洋菓子店とコラボしていたので、横山さんは新ジャンルの酒との挑戦に興味を持ち、快諾。この年は台風で必要量が収穫できなかったが、翌年、品質の良い実を選別して足立さんに提供した。その間、足立さんは「MIYOI(美酔)」というブランドで高槻産米を使って高槻で仕込む第1号酒を完成。ブルーベリーで造る酒も同じ米を使って、すべて地元産で仕込むことに決めていた。初しぼりは昨年初秋。
「初めて体験する味で、おいしい。今後も継続し、高槻に高品質のブルーベリーがあることを知らせたい」と横山さん。
米農家ともフルーツ農家とも一緒に造れる酒は、クラフトサケだけ。「農業に付加価値をつけ、農家の手助けになる酒を」という思いを持つ足立さんは、新たな可能性を感じる酒造りを進めている。

〔米の甘みとブルーベリーの香りが調和〕
高槻産キヌヒカリと横山さんのブルーベリーで醸した第1号酒「MIYOI Craft-Blueberry-」。ブルーベリー由来の色が美しい、爽やかでさっぱりした微発砲酒。今年はハーブを加え、新たな味に進化させる予定
足立農醸(牧田町)

【レモン×クラフトビール】
●高槻産米とフルーツで地元の味を
高槻産の原料でクラフトビールを─。
11坪の小さな醸造所から生まれたのは、高槻産の米とレモンを使ったクラフトビール。
醸造所の代表と高槻ブランドの米粉開発者が互いの思いを知った時、コラボな挑戦が始まった。

〔Lemon〕
・高槻産レモン
10月ごろから春まで。最初はグリーン、12月ごろから黄色く色づきはじめ、甘みが増していく。多くはマイヤーレモンという品種で、最近ではカフェや菓子店、直売所などで目にする機会が増えている

・軽やかでさっぱりしたゴールデンエールで米の甘みとレモンのやさしい香りがアクセント
BEER BASE TAKATSUKI(富田丘町)

◇高槻産という個性をいただく2つのクラフトビール
・醸造所「BEER BASE TAKATSUKI」の代表・川崎昭博さん(右)と醸造責任者・小林將元(まさゆき)さん(左)。中央は誕生のきっかけを作った高谷直樹さん
※詳しくは本紙をご覧ください。

川崎さんと小林さんは、それぞれが福祉関係団体の理事長。新たな就労支援の場をと、令和6年、富田で一緒にクラフトビールの醸造所を立ち上げた。2人には「地域とのつながり」という物語があるビールを造りたいという思いがあった。ある日、川崎さんは、ビールを造ってくれる先を探していた高谷さんを紹介された。偶然顔見知りだった2人は話を重ね、高谷さんが手掛ける米粉と高槻産レモンを使ったビールの醸造が決まった。
醸造を担当する小林さんは試行錯誤。米粉は麦汁造りの際に湯で練って使うと甘みが引き出せることがわかった。レモンは最初は皮だけを使用してみたが「果汁を入れてみたら」との意見が。やってみると苦みが和らぎ、香りも良くなった。入れるタイミングを見つけるのにも苦労したが、何度も試してベストなレシピを見つけることができた。
この経験を生かして、川崎さんたちもオリジナルの商品造りをスタート。高槻産レモンと、米粉の代わりに小林さんの福祉作業所で作った高槻の米を使った。「今後も地元の素材を使っていきたい。季節ごとのコラボもできたら」と川崎さん。山椒やブルーベリー、バナナ、酒かすなどアイデアは広がる。

(1)麦芽と水を加熱しながら練った米粉を加え糖化させる
(2)糖化した麦汁を煮沸しながらホップを入れ、最後にレモンの皮と果汁を加える
(3)酵母を加えて発酵させる
(4)タンクに入れて貯蔵する
※詳しくは本紙をご覧ください。

※「川崎さん」の「崎」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。