くらし 新春対談企画 枚方市長 伏見 隆×デザイナー コシノジュンコ さん(3)

■自分の中にブレない芯を持つこと

市長
絵が好きだというお話がありましたが、高校卒業後は東京の文化服装学院に進学され、19歳のときにはファッションデザイナーの登竜門とされる装苑賞を受賞されていますね。

コシノ
絵が好きで続けたかったし、実家の洋裁店は姉が継ぐものと思っていたので、当初は服飾の世界に進むつもりはなかったんです。けれど運命みたいなもので、いろいろな人の縁が重なってファッションの世界に進みました。そうしたら上京してすぐ、19歳で装苑賞をいただくことができて、それが自分の中でもとても大きかったです。肩書ができたことで仕事が来るようになった。20歳のときには、自分でもプロだと思うようになっていました。

市長
本当に若いときからご活躍されていたんですね。その後、活躍の場を海外にも広げられていますが、パリに初めて行かれたのは何歳のときですか?

コシノ
24歳くらいのときですね。当時はもう、コシノ家は家族全員ライバルで競争でしたから。誰が最初に海外で仕事をするかってね。

市長
お母様とも競争されていたんですね!同じ業界に身を置くコシノ家らしいエピソードですね。本当に長く第一線でご活躍され、今なお走り続けておられますが、お仕事をされるうえで、一番大切にされてきたことはどのようなことなのでしょうか?

コシノ
ブレないことですね。いろいろなことをやる中でも、自分に芯がないといけない。私の場合のそれは絵ですね。アートとしてだけでなく、ファッションの仕事も、まずはデザイン画から始まりますから。だから、小さい頃にたくさんの経験をして、いろいろな人に出会って、何かに目覚めることがすごく大事だと思うんです。

■新しい発想に大切なのは動くことと遊び心

市長
実はコシノさん、最近はお仕事で枚方にも何度か訪れてくださっていますよね。枚方には、どのような印象をお持ちですか?

コシノ
枚方といえば七夕でしょう。天野川とかがあって、エレガントですよね。

市長
伊勢物語にも、在原業平が天野川流域で詠んだ歌が残っているんですよ。文徳天皇の第一皇子である惟喬親王にお供をして、枚方へ狩猟に訪れたときに詠んだ歌です。歴史のある川なので、天野川はもっと親しまれる川にしたいと考えているんです。他にも、別荘の渚院は桜がとてもきれいで、渚院で詠んだのが「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」という桜の歌です。

コシノ
有名な歌ですよね。枚方といえば、あとは菊人形ですね。菊人形は今はやっていないんですか?

市長
ひらかたパークでの大菊人形展は終わってしまったのですが、今は市民の方々が技法を受け継いで、市役所前の公園などで毎秋開催している「ひらかた菊フェスティバル」で展示しています。

コシノ
生きた花を服に見立てて展示するなんて、なかなかない発想ですよね。枚方はそういう面白い発想を取り入れられる地盤があるところがとてもいいと思いますよ。歴史や文化を大切にすることで、未来など何かにつながるものができてくる。新しい発想でどんどんやっていくといいのではないかと思います。

市長
コシノさんはこれまで、たくさんのデザインやファッションを生み出してこられました。新しい発想をするために、大切にしていることはありますか?

コシノ
自分がまず動くことですね。机とペンがあるから何でもできるわけではないでしょう。遊びの中からも生まれてくるものって結構多いですよ。1996年に私はキューバでファッションショーをやりましたけれど、当時の日本ではキューバはほとんど知られていない国だったんです。ところがパリでは、カリブ海にあるキューバは夏にバカンスに行く国だったんです。実際にキューバに行ってみると音楽とダンスが盛んで、すぐにここではきっとすごいショーができる!と感じ、開催に向け動きました。実際、とても素晴らしいショーができて、今でも大好きな国です。デザインでもなんでも、遊び心が大切ですよ。

市長
遊びの中から、仕事につながることが見つかることもあるんですね。私も日々の生活をもっと大切にします。面白いまちにするためには、貪欲にいろいろなことに取り組んでいかなければなりませんね。

■多様な文化が出会うことで未来につながる

市長
最後に、より良い枚方市の未来をつくるため、行政が大切にしていくべきことについて考えをお聞かせいただけますか。

コシノ
枚方はちょっとお堅い印象があります。型にはまりすぎていたら、面白くないですよ。アート性のある世界を目指して、個性をもっと引き出せるようにしたらどうでしょう。たくさんの個性が出会えば、爆発的に面白くなります。そのためにはポイントになる場所があるといいですね。この総合文化芸術センターはとてもいいと思います。何度か来ましたけど、立派なホールもあるし、音もとてもいいですよね。

市長
ちょうど今日は、市内の小学生がセンターのホールでコーラスの発表をしていたんです。このホールは、有名なアーティストが公演するだけでなく、市内の芸術家や子どもたちが表現できる場にもしたいんです。

コシノ
万博をきっかけに久しぶりに大阪で仕事の縁ができましたけど、大阪はやっぱり面白いまちです。数えきれない要素を受け入れる力がある。まちづくりは仕切り過ぎず、多様性をフェアに受け入れることが大切だと思います。そのまちの歴史や文化も大切にしながら、多様な文化が出会うことで、未来につながるものができていくのではないでしょうか。

市長
いろいろな人との出会いを大切に、愛着をもってもらえるまちになるようこれからも取り組んでいきます。本日はありがとうございました。コシノさんもぜひ、また枚方に来てください。

コシノ
枚方を何度か訪れるうちに、すごく心の距離が近くなった気がします。今度、ひらかたコレクション、略して「ひらコレ」とかやってみましょうか。

市長
それは面白い!ぜひお願いします!

■大阪での2度の万博とコシノジュンコさんが手掛けたユニホーム
1970年の大阪万博では、建築家の黒川紀章さんや音楽家の一柳慧さん、当時通商産業省の堺屋太一さんなどから依頼を受け、3つのパビリオンのユニホームを担当。流行の最先端だったミニスカートやパンタロンなどをデザインに取り入れた。

2025年の大阪・関西万博では、前回に引き続きタカラベルモント社の展示スタッフのユニホーム(右写真左端)をデザイン。シルバーを基調としたユニホームは「未来」をイメージしたもの。また、市内企業が出店したレストランやボランティアスタッフが着用するユニホーム(右写真中央および右端)も監修。性別を問わず誰もが似合う機能的なデザインに仕上がった。
※写真は本紙をご覧ください。

■コシノジュンコさんの本・絵画を中央図書館で展示します
展示期間:1月6日(火)~12日(祝)(開館時間午前9時30分~午後7時、土曜・日曜、祝日は午後5時まで。金曜休館)、中央図書館4階。無料。展示している書籍は館内でのみ閲覧可。直接会場へ。

問合せ:広報プロモーション課
【電話】841・1258【FAX】846・5341