子育て 〔特集1〕対談「9年間で育む学びと未来」市長・教育長・校長が語る、小中一貫教育(2)

■実践推進校の取組は?
◇冨田校長
吉川小・中学校では、「児童生徒が一緒に学び、交流する機会を増やすこと」から始めました。最初は小学6年生と中学校との合同授業や体験授業が中心でしたが、昨年度からは小学1年生から6年生までが一緒に活動する縦割り班活動に中学生も加わる形に発展させ、学年を超えて協力しながら活動しています。
活動内容は、6年生が企画した前半のプログラムと、中学生が企画した後半のプログラムの2本立てで行います。中学生が加わることで、「こんな楽しいことができるんだ」という経験とともに、中学生の準備や進行のお手本を見ることで小学生にとっての良い学びの機会となっています。

◇高森校長
別所小・中学校では、まず「小中一貫教育で何を得るのか」という目的意識を全教職員で共有することを最優先に取り組み始めました。12歳、15歳の子どもたちの姿を全教職員がイメージし、どのような力をつけたいか、どのような子どもに育ってほしいかを共有することで、教育活動の意義を全員が理解した上でスタートしています。
小学校と中学校では教育文化や捉え方が異なるため、共通の課題を出し合い、重点を「学習」と「生活」の2本柱に定めました。9年間の学びがつながることを前提に、発達段階に応じた学習や生活指導のあり方を全教職員で考え、計画的に取組を推進しています。

「中学生の良さを吸収する姿に小中一貫教育の効果を実感」
吉川小学校 校長
冨田佳泰

「小中一貫教育だからこそ育まれる“育てる力”や“豊かな心”を明確に」
別所中学校 校長
高森伸彦

■それらの取組を通じて子どもたちの変化は?
◇冨田校長
小学生にとって、中学生との交流は大きな刺激になっています。つい最近まで一緒に小学校で遊んでいた友達のようなお兄さん・お姉さんたちが、中学生としてしっかり成長した姿を見せ、専門的な学習や活動の中でアドバイスをしてくれる様子に触れることで、憧れや目標を見つける機会となっています。さらに、中学生が優しく接してくれることで、下級生たちは安心して参加でき、学校行事や交流活動を楽しみにするようになっています。
中学生にとっても、小学生に教えたり一緒に活動したりする経験は、自分たちの役割や存在意義を実感する場となっています。小学生に優しく接することで、思いやりや自己有用感が育まれ、心の成長にもつながっていると感じられます。

◇高森校長
小中一貫教育を経験した子どもたちが中学校に進学すると、以前の新入生とは少し違う姿を見せていると教職員たちは感じています。入学当初から、まるで数カ月前から中学校にいたかのように落ち着いた雰囲気を持ち、緊張感よりも安心感を漂わせているのです。特に英語の授業では、小学校から中学校につながる学び方が身についており、スムーズに授業に参加できていることが大きな変化として挙げられます。

◇大北教育長
英語の学びが小学6年生から中学1年生へスムーズにつながっているのは、具体的にどのように工夫されているのですか。

◇高森校長
小学校で使う教科書を中学校の英語教師が確認し、重要度を付箋で色分けするなどして「どこに重点を置くか」を明確にしました。さらに文法カードを作り、英語の語順を学ぶ並べ替え活動などを小学校でも実践。結果として、小学校の授業と中学校の授業の流れが自然につながり、子どもたちも「次はこうするんだ」とスムーズに理解できるようになっています。

◇冨田校長
この取組は市内の小中連携の研修会の場でも紹介され、他校でも導入されつつあります。吉川小・中学校でも英語に限らず、教科ごとに先生たちが集まって話し合う小中合同の部会で良い実践を共有しています。

◇仲田市長
私からも一点お尋ねします。9年間同じ人間関係が続くと、もしトラブルがあった場合に解消しにくいのでは
との懸念もあります。その点はいかがでしょうか。

◇高森校長
小中一貫教育だからトラブルがなくなる、ということはありません。ただ、上級生が下級生をよく知っているので気にかける場面が多く、情報が伝わりやすい環境があります。日々の出来事などを記録する「生活ノート」や子どもの悩みなどを聞く「相談活動」とあわせて、未然に気付けることは増えていると思います。

◇冨田校長
さらに小・中学校の教職員が一緒に子どもの様子を見る機会が多く、情報を共有します。先生同士が連携して支援できるのは強みですね。

◇大北教育長
小・中学校の教職員が情報を共有することは本当に大切だと思います。学習面ではどうでしょうか。

◇高森校長
中学校の教職員が、各教科での「ここだけはおさえておいてほしい」というポイントを伝えています。小学校段階からその重要性を共有できるのは小中一貫教育の大きな意義だと思います。

◇仲田市長
今日のお話は具体的で、保護者や地域の方々にもイメージが湧きやすいのではないでしょうか。変化に対しては戸惑いもあると思いますが、市としても子どもたちの成長のためにこの取組を進めていることがしっかり伝わるようにしていきたいです。

■児童生徒の“交流”
◇合同学習・行事の実施
小・中合同で学習や行事を行い、互いに刺激を受けながら成長しています。小学生は中学生から学びを深め、中学生は教える機会を通して責任感や思いやりを育んでいます。

◇縦割り班活動
小学1~6年生に加え、中学生も含めた1班10~20人のグループで活動。読み聞かせや上級生が考えた遊びなどを行うことで、協調性やリーダーシップ育成につなげています。

■教職員の“連携”
◇小・中学校合同研修会
各教科において、つながりのある9年間の学びを積み上げるため、つまずきやすいポイントを共有。学習内容の流れや重
点などについて研修しています。

◇小・中学校相互授業参観
児童生徒の様子を共有しながら、より効果的な指導方法を探ります。9年間を見通し、小・中学校それぞれの発達段階に応じた指導方法の工夫を深めています。

問合せ:(市)小中一貫教育推進室