子育て 〔特集〕こども・若者参加条例が制定 未来へつなぐ笑顔と幸せの架け橋(1)

こどもや若者があらゆる場で安心して意見を表明できることをめざし、制定された「こども・若者参加条例」。同条例の内容や制定までの過程などを紹介していきます。

■こども・若者の意見や考えに寄り添う
皆さんは、何かを決める時、こどもや若者の意見を聴いていますか。こども・若者に関わることでも、おとなだけで決めてしまうことはないでしょうか。
たとえば、コロナ禍において、運動会や修学旅行などの学校行事について、おとなたちが感染症対策という観点からこどもたちの安全性を最優先に考えた結果、行事を中止するという判断をしたことがありました。こどもたちにとっては、楽しみにしていた学校行事が急になくなったことで、いろいろな意見や思いがあったのではないかと思います。こどもたちの意見や思いを聴き、寄り添い、一緒に考えることができていれば、異なる結果になっていたかもしれませんし、同じ中止という判断となった場合でも、こどもたちの思いがまた違ったものになったのかもしれません。

■意見が尊重される環境を
そうした経験から、家庭や学校、地域などあらゆる場でこども・若者が安心して意見を言うことができ、その意見が尊重される環境をつくりたい。そんな思いから、「こども・若者参加条例」の制定に動き出しました。

■こども・若者が主役となる条例にするために
こども・若者が参加する条例検討部会を開催し、自分の意見表明をすることなどについて、意見交換を行いました。
また、おとなで構成する条例検討部会も併行して開催することで、それぞれの立場の意見を反映した条例作りを進めてきました。
さらに、さまざまな世代が意見交換をする機会を設けることで、互いの思いを知り、新たな気付きにもつながりました。各部会で出た意見については、条例のあらゆるところにその思いが込められています。
特に、条例の前文については、参加者と一緒に条例作りをしてきた過程を大切にしたいと考え、こども・若者からのメッセージを掲載しました。詳しくは、本紙3ページ以降で紹介します。

■「こども・若者参加条例」のポイントはここ
市は、育ち学ぶ施設、保護者、団体、市民などと協力し、あらゆる場でこども・若者の意見が尊重され、こども・若者にとって最善の利益が図られるまちをめざします。

◆多様な意見の聴取
市は、自発的に上げられる意見だけでなく、さまざまな事情で自分の考えなどを伝えることが難しい、こども・若者の意見も積極的に聴いていきます。

◆こども・若者のメッセージ
条例の前文として、こども・若者が意見表明をするときに、周りに大切にしてほしい六つのことなど、こども・若者からのメッセージが記されています。
(1)意見を聞くときは親身になって真剣に聴いて答えてほしい
(2)話を途中で遮らずに最後までしっかりと聴いてほしい
(3)伝えた意見をむやみに他の人に言ったりしないでほしい
(4)少数派の意見も尊重し受け止めてほしい
(5)伝えた意見がどうなったか教えてほしい
(6)安心して意見を伝えることができる雰囲気や環境をつくってほしい
※意見表明とは、言葉だけでなく表情や身ぶりなど言語によらない方法も含みます。

◆条例で保障すること
条例では大きく次の二つのことを保障しています。

◇こども・若者の意見表明権
・自分の意見を自由に伝える権利
・意見表明をするために必要な情報を受け取る権利
・意見を伝えたことで不利益を被らない権利

◇まちづくりに参加する権利
・まちづくりやいろいろな社会的活動に、主体的に参加する権利

■INTERVIEW
◇玉木健弘 Tamaki Takehiro
武庫川女子大学心理・社会福祉学部心理学科教授。令和3年から、市子ども・若者未来会議副会長を務める。また、市こども参加条例検討部会長も務めた。

◆こども・若者の可能性を広げたい
この条例の策定には、私が当初想定していたよりもずっと多くのこども・若者が参加してくれました。私たちおとなが気付いていないだけで、こども・若者は「自分はこう思っている」「こういうことに参加したい」という思いをちゃんと持っているのだということを改めて思いました。
今回の川西市の取り組みは、こども・若者が自分の思いを表明する権利、まちづくりなどに参加する権利を保障することに重点を置いているという点、またそれをこども・若者と一緒に策定したという点で、全国的にも珍しいものだと思います。
私は、こどもや若者には無限の可能性があると考えています。その可能性を少しでも広げるお手伝いをしたいという思いで、条例策定に取り組みました。
川西市の未来はこども・若者の皆さんがつくっていくということは間違いありません。皆さんには、自分が思っていること、やりたいことをぜひ実現していただきたいと思います。そのために、私たちおとなの役目として、こども・若者に寄り添い、支援し続けていきたいと思っています。