くらし 〔特集〕環境を考える、未来をつくる(1)

都市の利便性と豊かな自然が調和する川西市。市内では環境を守るために、自然活動団体や企業などが活動しています。今回の特集では、こうした団体の取り組みを紹介するとともに、市がめざす「ゼロカーボンシティ」にもスポットを当てます。

室町時代から続く「菊炭」の炭焼き文化が息づく、市北部の黒川地区。里山の自然を未来へつなぐために活動する「菊炭友の会」の代表に、活動内容とその思いについて話を聞きました。

菊炭友の会 代表 中川彰さん

■「炭と桜」から始まった活動
「黒川地区の伝統文化である『菊炭』の生産。それを継承していきたいという思いを持ったメンバーが集まり、『菊炭友の会』が発足しました」
そう話すのは、代表を務める中川彰さん。同会の発足は約20年前にさかのぼります。
「NPO法人『シニア自然大学校』主催の講座を受講した12人が、県から『里山ふれあい森づくり事業』への参加を打診されたのが始まりです。黒川の桜『エドヒガン』を救出し、群生地『黒川・桜の森』を整備することが事業の目的でした。参加することには消極的でしたが、活動地に炭窯を設ける提案を受け、それならばと整備を始めました。平成18年から本格的な整備活動を開始。念願の炭窯も1年後に完成しました。丹精込めて焼いた菊炭は、主に茶道で愛用いただいています」

■記憶に残る景色を守る
市や県、企業などから助成を受け、活動を続ける同会。「黒川・桜の森」を訪れた人の笑顔を見ることが、今では何にも代えがたいやりがいだと中川さんは話します。
「エドヒガンの大木『微(ほほえ)笑み桜』は枝ぶりが見事で、春には多くの人が訪れる憩いの場となっています。現在は保護から周辺整備へと重点を移し、遊歩道の整備や解説板の設置などを行っています。また、牧の台小学校と緑台小学校の4年生を対象に、里山体験学習の受け入れを行っています。子どもたちにはクヌギをドングリから育ててもらい、その苗を森に植樹してもらいます。先日、過去に里山体験をし、今は大学生になった子どもが森を訪れてくれました。里山での体験が記憶に残っているということが、何よりうれしかったですね」

■世代を越えてつなぐために
現在、同会には34人が登録。一時期は50人以上の会員がいましたが、コロナ禍や高齢化の影響で減少したと中川さんは話します。
「高校生など若い世代の参加もありますが、中心となるメンバーは60~70歳代。高齢化は顕著で、担い手不足は長年の課題です。私たちは日本の美しい風景や伝統を、後世に残したいという一心で活動しています。興味がある人にはぜひ『黒川・桜の森』を訪れてほしいですね」

同会の活動日や「黒川・桜の森」へのアクセスなどは、下の2次元コードから
※二次元コードは本紙をご覧ください。

■市内の自然活動団体など主な活動場所
(1)川西里山クラブ
(2)菊炭友の会
(3)大和フォレストクラブ
(4)渓のサクラを守る会
(5)能勢妙見山ブナ守の会
(6)東多田里山の会
(7)ひとくら森のクラブ
(8)NPO法人 ひょうご森の倶楽部
(9)NPO法人 北摂里山文化保存会
(10)身近な自然とまちを考える会
(11)虫生川周辺の自然を守る会
(12)NPO法人 野生生物を調査研究する会
(13)ゆめほたるクラブ
(14)流域ネット猪名川
(15)認定NPO法人 コクレオの森
(黒川里山センター)
※地図は本紙をご覧ください。

各団体について詳しくはこちら
※二次元コードは本紙をご覧ください。

◇協働・連携で守る猪名川の自然
流域ネット猪名川
猪名川流域を保全し、より多くの植物が共生できる環境をめざす同団体。外来植物の駆除や川の清掃、生き物観察会など地域と協働・連携しながら活動に取り組んでいます。
代表の下芝さんは「猪名川流域は昔からの自然が多く残る大切な場所です。しかし当たり前だった川の自然は、ごみのポイ捨てや外来種の影響などで変わり始めています。次の世代に残していくには、今、私たちが守る必要があります。一人一人が関心を持ち、多くの目で見続けていくことがとても大切です」と話します。

◇里山の魅力を多世代に伝える
認定NPO法人 コクレオの森
黒川里山センターを運営する同法人。菊炭の産地である黒川地区では、長年にわたり原料となるクヌギ林を地域の住民や森林ボランティアなどが手入れをしてきたことで、豊かな里山の景観が守られてきました。
同センターでは、地域や団体と協力し、「里山暮らし」をテーマとした、自然観察や木工、郷土料理作りなど体験型のイベントを開催しています。同法人の藤田さんは「イベントを通して多くの人に黒川の魅力を伝えたい」と活動への思いを話します。

◇生物多様性の保全の取り組み
ダイハツ工業(株)多田エンジニアリングセンター
多田地区で、市の天然記念物である「水明台エドヒガン群落」のエドヒガンの種を社内で育苗し、植樹会を開催しています。エドヒガンの保護活動を行っている「渓(たに)のサクラを守る会」の樹林保全活動にも参加。環境施設や自然共生の取り組みを通して、従業員の環境マインドの醸成につなげています。
参加した従業員からは、「地域について知ることができる、良いきっかけになりました」などの声が寄せられています。