くらし 〔Column〕生きる

■障がいの「見える化」を巡って Vol.3
◇ヘルプマークを巡る私の葛藤
ヘルプマークが広まり始めた頃、私は付けていませんでした。外見では分かりにくい障がいを持っている人への支援にやっと光が当たったと期待する一方で、その解決を「ヘルプマークを介したお互いの思いやりと助け合い」という個人の善意に頼り、行政側が「見えない障がい」を抱える人たちの本当の問題に向き合っていないことに憤りを感じていました。
しかし、悩むうちにヘルプマークを付けて私には障がいがあるとアピールすること自体を怖がり、ためらっている自分に気付きました。メディアやSNSでは、障がい者を巡る事件や言い争いを目にします。「ありのままの自分で堂々と生きていくことが他の誰かの励みになるかもしれない」と思っていたのに、「自分が障がい者だということを周りに知られると、自分も差別されたりつらい思いをするかもしれないから隠したい」という矛盾した思いに気付いたときには我ながらショックでした。そこで私はやっと市役所に行ってヘルプマークの配付を受けようと決心がついたのです。
本来、生きづらさというものは人生の数だけあり、マークでカテゴライズされるものでもありません。ヘルプマークはあくまで、この社会の中で感じる障がい(生活していく上での障壁)の種類や有無に関係なく、誰もが必要な時に必要な支援を受けられる社会を実現していくきっかけの一つです。いつか最終的にヘルプマークがその役割を終えることこそが私の夢です。
NPO法人大阪難病連事務局長 尾下葉子

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