くらし 〔特集〕「当たり前」を見直して私たちにできること(2)

■日常に溶け込むプラスチック
海に流れ出しているプラスチックごみは、ポイ捨てなど故意に捨てられたものだけではありません。実は、私たちの日常生活の中からも、知らないうちに多くのプラスチックが流れ出しています。
たとえば、ポリエステルやナイロンといった素材で作られた衣類やタオルは、洗濯をするたびに細かな繊維が抜け落ちます。それらは下水処理をすり抜け、やがてプラスチックごみとなって自然環境に残り続けます。また、日焼け止めや歯磨き粉などの一部の製品の中には、目に見えないほど小さなプラスチックの粒子が含まれています。滑らかな使い心地を生み出すこの成分も、洗い流されることで環境中に放出され、プラスチックごみ問題の一因となっています。
前のページで紹介した、内陸部から海へと流出する年間最大約3万トンのプラスチックごみのうち、約2.4万トンは、こうした日常生活の中から排出されているといわれています。
「ポイ捨てをしていないから、自分には関係ない」と思ってしまいがちですが、実は私たち一人一人が、知らぬ間に環境へ負荷をかけている当事者となっているのです。
目に見えないほど微細になったプラスチックは、海水から作られる塩や魚介類、飲み水、さらには大気中にも含まれ、私たちの体内に知らぬ間に取り込まれています。
その多くは排泄などを通じて体外に排出されますが、マイクロやナノサイズのプラスチック粒子は、消化管や細胞を通過して血液中を循環し、脳や内臓にまで到達・蓄積することがさまざまな研究結果で分かっています。
さらに、プラスチックには人体に有害な添加物が含まれており、紫外線による劣化で添加物が表面化すると、ホルモンバランスを乱すなどの健康被害を引き起こす可能性があります。加えて、プラスチックは鉛やカドミウムといった重金属、農薬などの有害物質を吸着しやすい性質を持つため、人体への影響が一層懸念されています。
実際に、肺がん患者の肺からマイクロプラスチックが検出され、粒子の濃度が高いほど炎症反応も強いという研究結果も示されています。
マイクロプラスチックが与える人体への影響は、まだすべてが解明されているわけではありません。しかし、私たちの何気ない日々の暮らしの影響が、めぐりめぐって自分たちの身体に返ってきているという現実を知り、受け止める必要があります。

●マイクロプラスチックとは?
直径5mm以下の小さなプラスチック片のことを「マイクロプラスチック」と呼びます。目で確認できるものから、粉のように細かく肉眼ではほとんど見えないものまでさまざまな大きさがあり、海や川、土壌、さらには空気中にも存在しています。
マイクロプラスチックが自然界に流れ出す主な原因は、私たちが使うプラスチック製品が屋外の紫外線や摩擦、時間の経過によって砕けて劣化・摩耗することで、元の姿が分からないほど小さくなるためです。こうして細かくなった破片は回収が極めて困難になり、そのまま環境中に残ってしまいます。
また、はじめから微細な状態で作られているプラスチックもあります。例えば、化粧品や洗顔料に含まれるスクラブや、衣類を洗濯する際に生じる化学繊維(ポリエステルやナイロンなど)の細かな繊維片などです。これらは家庭の排水と一緒に流れ出し、下水処理では取り除ききれずに自然界へ放出されてしまうことがあります。

▽マイクロプラスチックの元になり、自然界に流出しやすい製品
・トレイ
・レジ袋
・ボトル類
・発泡スチロール
・人工芝(※)
・タイヤ(※)
・不織布マスク
・洗顔
・歯磨き粉
・日焼け止め
・衣類の繊維
・ファンデーション、リップグロス・マスカラなどの化粧品
※タイヤが摩耗してできる粒子や劣化して抜け落ちた人工芝もすべてマイクロプラスチックとなり、河川や海へ流出します。

●プラスチックがもたらす人体への影響
近年、心臓や肺、血液、母乳などからのマイクロプラスチック検出結果が相次いで報告されています。
マイクロプラスチックが原因であると証明された疾患や病気の例はありませんが、マイクロプラスチックに含まれている可塑剤や紫外線吸収剤などの添加物や、吸着された有害物質には人体に悪影響を与えることが分かっています。

▽プラスチックに含まれる添加剤と吸着された有害物質が人体に及ぼす影響
・発がん性
・免疫機能低下
・内分泌かく乱作用全般
・胎児・乳幼児の発達異常
・血栓形成リスクの増加
・アレルギーや自己免疫疾患の増加
・中枢・末梢神経系への影響など

▽マイクロプラスチックの人体への侵入経路
(1)肺への吸入
タイヤなどの摩耗で排出されたマイクロプラスチックを吸い込むことで、肺に取り込まれてしまう恐れがあります。

(2)飲食による摂取
魚や貝などの生物が取り込んだマイクロプラスチックを食べたり、水道水などの水を飲み、体内に侵入します。

(3)経皮からの侵入
化粧品やクレンジング、洗顔などに含まれるマイクロプラスチックが、皮膚や粘膜を通して体内に入り込む場合があります。

●普段使用している製品に何が含まれているか確認してみましょう
プラスチックの添加を規制する動きがある中でも、未だにマイクロプラスチックが原材料として使用されている製品があります。普段使っているものに何が入っているのか、成分表を見て確認してみましょう。マイクロプラスチックが使用されている場合、下記のような成分が含まれています。
ナイロン-12
ナイロン-6
ナイロン末
ポリエチレン(PE)
ポリエチレン末
ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
ポリプロピレン(PP)
ポリスチレン(PS)
ポリウレタン(PU)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
コポリマー
クロスポリマー
など