健康 診療所からこんにちは

第3回:脂肪肝について

下北山村診療所の船迫です。まだまだ暑い時期が続いていますが、皆様お元気に過ごされていますでしょうか。当村も夏の昼間はとても暑くつらいですが、夜は奈良盆地の地域と比較すると3℃ほど涼しくて快適に過ごせました。これから徐々に気温が下がり、食欲の秋の時期が来るのが楽しみですね。ですが、食事がどんなに美味しくても食べすぎ注意でお願いします。そこで、今回は食事と関連したテーマ「脂肪肝」についてお話しようと思います。

■脂肪肝とは
脂肪肝はその名の通り、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態のことを指します。肝臓には食事で摂った糖質や脂質から中性脂肪をつくり蓄え、必要に応じてエネルギーとして使用する貯蔵庫の役割があります。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れていれば問題はないですが、食べ過ぎや運動不足などでバランスが崩れると肝細胞に中性脂肪がどんどん溜まり、結果として脂肪肝となってしまいます。脂肪肝は自覚症状がないことがほとんどであり、健康診断での血液検査で肝機能異常(AST・ALTの上昇)を認めることや腹部エコー検査で脂肪の沈着の指摘されることで発見されることが多いです。日本では成人のおよそ30%の方に脂肪肝があるといわれています。また、小児でも5%程度の人は脂肪肝があると推察されています。

■お酒を飲まなくても脂肪肝に
以前は肝臓の病気というとお酒の飲みすぎによるアルコール関連肝疾患(ALD)やB型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎が大半を占めると考えられていました。
しかし、近年は上記の原因によらない、肥満、食べ過ぎや運動不足、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病に伴って引き起こされる肝臓の病気、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディ―)の存在が指摘されており、その患者数が増加傾向といわれています。
さらに、NAFLDのなかには肝細胞に慢性の炎症、肝臓の線維化を伴い、肝硬変や肝細胞癌に進行するリスクのある非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)とよばれる重症型の状態があります。肝臓の障害が進行するNASHにおいても自覚症状はほとんどないため、見逃さないようにすることが大切です。

■NAFLDに対する治療
NAFLDに対しての対策は食事と運動の両面に取り組み、体重減量を行うことです。体重減量の目標値はBMIが25以上の方は体重5%の減量、BMIが25未満の方は体重3〜5%の減量を目標とします。
食事について間食はなるべく摂らないように心がけてください。食事は過度な糖質制限食ではなく1日3食の栄養素のバランスの取れた食事が推奨されます。
運動はウォーキングなどの有酸素運動に加えて筋トレなどのレジスタンス運動を合わせて行うとよいでしょう。1回あたり30〜60分の運動を週3回できるよう習慣化しましょう。お酒を頻繁に飲むアルコール関連肝疾患の方はお酒を控えていただくことが大切です。禁酒していただくのが一番ですが、飲酒する場合でも1日当たりの純アルコール量20g程度(例:ビール500ミリリットル)までの節度のある飲酒量を心掛けましょう。
また、血液検査での肝機能異常はその他、薬の副作用による薬剤性、遺伝性疾患、自己免疫性疾患による影響の可能性もあるため、気になることがあれば診療所に相談してみてください。
最後に、肝臓はその機能が低下する末期の状態となるまで自覚症状が乏しく、「沈黙の臓器」ともいわれています。脂肪肝はその異変を教えてくれる最初のサインです。健診等で指摘された場合は「何も症状がないから大丈夫」と思わずに、ぜひ医療機関へご相談してみてください。