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- 自治体名 : 和歌山県紀の川市
- 広報紙名 : 広報紀の川 令和7年9月号
■麻生津九頭神社のクロガネモチ
今回ご紹介するのは、稀に見る大きさでありながら今まで限られた人にしか注目をされてこなかったクロガネモチ(モチノキ科)の巨木です。九頭神社の境内の一隅にまさに神宿るといった風格をもつ姿で四方に根を張ります。
クロガネモチの日本での生育地は、関東以西の本州・四国・九州などの暖地の山地で、雌雄異株の常緑高木で幹はまっすぐ、樹皮は灰白色で林内では目立ちます。花は夏に咲き、秋に赤熟した果実が冬の枝にも見られ、街路樹や庭木として植栽されます。
全国レベルで最大級のものは、根元から1m30cmの高さで幹周り(胸高幹周)5mあり、4m50cmを越すものが17株知られています。和歌山県内では、県指定の天然記念物として和歌山市に「くろがねもちの老樹」が一件あります。雄株で樹高は約15m、胸高幹周は4mとなっています。
現地調査の結果では、九頭神社のクロガネモチは幹回りの計測で4m20cmありました。この値をもって全国の17株と天然記念物の指定の有無や樹高、推定樹齢などを比較してみると、樹高は約25mであり第1位となり、樹形も申し分ない風格と存在感を示しています。
生育地は社殿の裏手にある社叢内ではなく社殿の前広場の一角にあります。自生か植栽なのか検討すると、宮司のお話によれば、周辺古老からの口伝や神社資料にも植栽の記述は見当たらないとのことです。江戸時代後期編纂の『紀伊続風土記』、『紀伊国名所図会』にも手がかりはなく、今のところ鳥類による種子散布による可能性が考えられます。
また九頭神社の社叢及び周辺で特筆すべきことは、海岸性植物のヒメユズリハやミミズバイを見ることができることです。
いずれにしても、大切にしたいことは、一株の草木も我々人間と同じように命をもった存在であり、九頭神社の巨木が永年の風雨に耐え、現在までその生命力が目に見えない周辺の人々と自然の力によって守られてきたことです。
今まさに我々の眼前にある奇跡に、感謝の念をもつとともに、これらを含む森林及びクロガネモチの巨木が末長く成長することを祈りたいものです。
問合せ:紀の川市文化財保護審議会
【電話】内線74202(生涯学習課内)