文化 金剛峯寺の正門と門前の見どころ

日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし

◆盥(たらい)と杉盛(すぎもり)を訪ねて
金剛峯寺の正門は、文禄2年(西暦1593年)に建立された、現存する中でも最も古い建造物です。現在は国の重要文化財に指定されており、重厚な構えと歴史を感じさせられる佇まいが、訪れる人々を出迎えます。
かつては、正門を通ることができたのは、天皇陛下や皇族、また高位の僧侶のみとされていますが、現在では一般の方々も通ることが出来ます。しかし、高野山の僧侶は、現在でも正門右手の小さな出入口から境内へと出入りしています。今もこうした厳格な伝統が大切に守られている点は、高野山を象徴するひとつです。
正門の前には、左右に「赤い盥(たらい)」と「杉盛(すぎもり)」が置かれています。
これは、法会(仏教的儀式)が行われている期間中にのみ見られる特別な設(しつら)えです。
一説として、赤い盥はかつて大名参詣の際に、馬の飲み水用として設けられたほか、参詣される方が身を清める為の「手水鉢(ちょうずばち)」としての風習であったと言われています。
杉盛は、高野山を象徴する「高野六木」のひとつである杉の枝葉を用いて独特の形に整えられ門前に飾られます。
また、盥の水で身を清め、杉盛に水を払い落すとも言われていますが、現在は主に神聖な結界を表すものとして捉えられています。
これらのような設えは、特別な日にのみしか見ることができませんので、もしあなたが高野山でこれらを見かけた際は、ちょうど特別な法会が行われている期間かもしれません。
その時は心静かに手を合わせ、その場その時の空気を感じてみてはいかがですか?
次章では、正門の扉に施された金具や装飾についてご紹介します。
細部に宿る職人技と装飾に込められた想いに注目です。

問合せ:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺
【電話】0736-56-2012