くらし 南部町のいきものたち(217)

■ハマダイコン
◇大根とは別物
2023年4月21日、赤猪岩神社の駐車場からピンクの花が群生しているのが見えました。アブラナ科のハマダイコンです。海辺によく見られる植物ですが、浜辺のない南部町で、もしかしたら名前の頭に「ハマ」がつく唯一の草本かもしれません。古い図鑑ではダイコンが逸脱して野生化したものがハマダイコンと紹介されているのもありますが、詳しいゲノム解析などの結果により、ハマダイコンはダイコンと別物であることが分かりました。ハマダイコンを畑で育ててもダイコンにはならないのです。

◇出雲おろち大根
そういえば、ハマダイコンはまだ食べたことがないなぁ、と食べられる方法を調べていたら、なんと無自覚ですでに味わっていたことが判明。実は、野菜や果物の食品のパッケージを集めている中、見たことがないダイコンの商品が店頭で並んでいるのに気がつき、コレクションとして買っていたのが、ハマダイコンだったのです。島根大学がハマダイコンを品種改良登録をした「スサノオ」を「出雲おろち大根」というブランド名で販売。購入後、少量をおろしてざる蕎麦と一緒に食べた時、辛味大根よりも強く感じる辛味は、むしろダイコンよりもワサビを思わせる刺激で、とても驚いたことが思い出されました。

◇辛味成分の効用
ハマダイコンだけでなく、ブロッコリー、ダイコン、ワサビ、コマツナ、ハクサイ、キャベツなどアブラナ科の多くの野菜は、辛味成分のイソチオシアネートや抗酸化性ビタミンなどの含有量が高いとされています。国立がん研究センターの公式サイトでは、約9万人を追跡調査した研究で、アブラナ科植物を相対的に多く食べている人は、がんや心疾患、脳血管疾患など全ての死亡リスクが低くなっている報告があがっていました。本来なら辛味成分も他の草食動物や昆虫などに食べられないように、植物が身につけた生き残り戦略ですが、人が適度に食することにより健康面でも大きな恩恵が生まれ、ありがたい存在になっています。ただし、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」。体にいいからと一気に大量摂取はしないように気をつけましょう。

自然観察指導員 桐原真希