くらし 南部町のいきものたち(223)

■ミナミテナガエビ
◇スジエビじゃない!?
2022年10月13日、この日は月2回開催している「なんぶ生き物探検隊」の日でした。小学校の児童さんと一緒に、「キナルなんぶ」のそばを流れる水路で生き物を探すプログラムを実施。カワムツやドンコ、カワニナなど色々な水生生物が網に入りました。「何が何匹獲れたかな?」と生き物を仲間別に仕分けたトレーを覗いたら、「はて?」と違和感を覚えたのです。「なにこのスジエビ、こんなにハサミ長かったっけ?」と、馴染みのスジエビと違うエビが混じっています。腕が長くなるタイプでもいるのだろうかと、ひとまず持ち帰って調べることにしました。

◇町内初確認!
その日のうちに、南部町では正式な記録がない南方系のミナミテナガエビと判明しました。しかも、鳥取県内の生息状況が不明とされていたのです。その後、常清地区でも複数回捕獲され、記録の報告を準備しようかと思っていたところ、ちょうど米子市にお勤めの鳥取県生物学会会員であるTさんが、県内のデータをまとめて発表されるとのことで、2022年の南部町の観察記録を3件提供することができました。その内容は2023年12月発行「山陰自然史研究」No.19に掲載されています。その後、阿賀(2023)、能竹(2024)でも見つかりましたので、もしかしたら町内に広く生息しているかもしれません。

◇北上するかも?
ミナミテナガエビは、本州中部以南、四国、九州、南西諸島に分布しています。現在、日本海側では石川県が北限ですが、昨今の気象変動で海水温の変化が大きくなると、富山県や新潟県で確認される可能性もあるかもしれません。大きなサイズの個体は、ヒラテテナガエビ(別名ヤマトテナガエビ)と、テナガエビに似ていますので、区別する時はハサミの毛や、胸の模様などを確認してみましょう。いずれも美味しく味わえる川の恵みなので、水辺の常連さんでいてほしいですね。

自然観察指導員 桐原真希