くらし 「こどもまんなかアクション」リレーシンポジウムin松江(3)

■テーマ2 子育ての「孤立」を防ぐために、地域と行政が手を取り合うには?
岩田:核家族化が進行してアパートやマンションといった集合住宅系で、隣には誰が住んでいるのかよくわからない中で、インターネットに頼って子育てしている人がいるかもしれませんね。

てぃ先生:こういうテーマを掲げた際に、解決策として出てきやすいのが、人との繋がりを持ちましょうっていう、こればっかりになるんですけど、僕はこれ正直半分間違っていると思っています。人が居ればいいのではなく、「共感してくれる人がいるかどうか」が重要だと思うからです。例えば、家で旦那さんが子育てしてくれるかもしれない、手伝ってくれるとか家事もやってくれるかもしれない。だけど、最近うちの子、◯◯なんだよねっていうママの悩みを旦那さんにぶつけた時に、共感するんじゃなくて、こうすればいいじゃんってアドバイスベースで全部返してきたりすると、結局相談したママの孤立感は目の前に人がいるにも関わらず消えてないわけですよね。この手の話題は、ゴールが『人との繋がりを作りましょう』、『インターネット上でも誰でもいいから話せる人を作りましょう』って話になるんだけど、そうではなくて、必要なのは自分に寄り添ってくれるかどうかであって、そこを履き違えてしまうと危険かなと思います。

安里:本当にその通りです。うまくいってるところは、居場所を開いてる人に思いがあって、ちゃんとスタッフにその思いが共有されていると、安心して『共感してもらえる人がいる場所』になるんですけど。

市長:自分1人だけで解決できることは多くないので、得意な人に解決策を求めたり、行政が必要なサービスを提供することも重要です。特に松江市が、市民の皆さんの「子育て」を応援するにあたって力を入れているのがデジタル技術の活用です。例えば、LINEで友達になるだけで24時間365日、子育てに関する悩みに応えてくれる「まつえの子育てAIコンシェルジュ」を無料で提供しています。3千人を超える方が登録されていて、子育てに関する困りごとや悩み相談を受け付けています。
また、令和5年から保育所の入所申し込みをオンラインでも実施できるようにしました。従来は、保護者の皆さんに市役所まで足を運んでもらい、申込用紙に第5希望まで保育所名を記入していただき、それを市役所職員が1件1件空いている保育所とマッチングするのに7日間かかっていました。それをAIが担うことで、なんと10秒でマッチングできるようになりました。すでに約53%の保護者の方が、オンラインの「スマート申請」で入所申し込みをされています。
ただ私は、AIやDXですべての課題が解決されるとは思っていません。むしろ、松江ならではの人の温かさによって、こどもの成長や子育てを支えることが大切と考えています。それで「こども家庭センター」を設けました。昨年度から各自治体にその設置が努力義務化されましたが、松江市はその1年前、一昨年の春に設置しました。妊産婦さん、子育て世代、こどもたちが直接相談できるワンストップ窓口です。当センターを設置する前と比べれば対応件数が9割増え、ヤングケアラーやこどもの貧困の問題などが見つけやすくなっています。
これからも、市民の皆さんにニーズをお聞きしたうえで、日々子育て支援策のバージョンアップを図っていきたいと考えています。

佐藤:素晴らしいですね。やっぱり不安材料が減るっていうのは、そのまちに住んでいる方にとっては嬉しいことでしょうし。ただ孤立してる人は、多分頑張りすぎている人だと思うんですよね。だからそういう人たちに周りに頼っていいんだよ、子育ても1人でしなくていいんだよって声がけをするだけで随分肩の荷も楽になると思います。
ちょっと別の話なんですけど、先日、福井県に仕事で行ったら福井県って健康寿命が結構高いんですよ。3世代で一緒に住んでるお家が多いっていうのを聞いて。結局だから子育てもお父さん、お母さんがやるけど、おじいちゃん、おばあちゃんも手伝いながらみんなで子育てをしていくと共感してもらえて、心が安らかになるというか健やかになるというか。そういうことによって健康寿命が高いんじゃないかと。人と人との繋がり、頼っていいんだよって頼られていいんだよってていうその関係作りっていうのを街でずっとやっていただけたらいいなと思うんですけど。

安里:今皆さんの話を聞いて、希望が持てる話を思い出しました。これはお年寄りの孤立対策に関して聞いた話なんですけど、近所で挨拶している関係だけでも和らぐんですって。ドイツは面白くて、スーパーのカゴを2種類にして、そのひとつを『おしゃべりOKかご』っていうのを作って。おしゃべりしたい人はそれを持って入ると、持ってる人同士もおしゃべりをするし、レジで店員も話しかけるし、ゆっくりおしゃべりしながら買い物をする。すると、その地域のお年寄りの幸福度が上がったらしいんです。地域で声をかけ合う、簡単なことでもきっと孤立対策に効くと思います。ちゃんとDX化、AI化して楽にできるところはそうして、でも、どっぷり関わりたい人にはちゃんと関わって対面でできる場所がある。松江市のこのかけ合わせがとてもいいと思います。