くらし エーロさんに聞いてみよう フィンランドのよもやま話

Eerolla on asiaa
フィンランド出身国際交流員による、フィンランドや邑南町の話

■第14回「学校心理士の視点からみるフィンランドの学校」
▽知られざるエーロさんの略歴
「大学の専門は日本語でしたか」などと、邑南町に来る前、何をしていたかよく聞かれます。実は、大学と大学院での私の専門は心理学でした。コロナ禍から、邑南町に来る直前まで、小中学校と高校の心理士として働き、ヘルシンキで2つの公立学校と2つの私立学校に通っていました。

▽心理士のなり方
フィンランドで心理学者になるための課程は大学と大学院を合わせて5年半かかります。修士号を取ると心理士の資格をもらえます。フィンランドで心理学者として働けるのは、小中学校と高校、大学、病院、会社、刑務所、心理検査を行う機関等があります。
大学院の課程に、基本的な心理検査や面談・カウンセリング等の授業や練習がありますが、具体的なスキルは仕事をしながら身に付けます。例えば、学校心理士は未経験の応募者は大歓迎で、すぐに実績を示す必要はありません。課題は幅広く、教員、医療機関の職員、保護者は相談等で心理士に直接連絡することができます。

▽学校でのメンタルヘルスサポート
フィンランドでは生徒のメンタルヘルスのサポートが進み、各学校の生徒に届くサポートが広がっています。つまり、学校心理士とスクールカウンセラーという2つの業務があり、全国の学校をカバーすることを目指されています。この2人の役と課題が似ているところが多いですが(カウンセリング、両親の相談、面談など)、心理士しかできない心理検査やその結果の解釈等もあります。
両方とも授業に参加して、メンタルヘルスの維持の意識と練習をクラス全体と行う時もあります。全部の学級を回る時間はありませんが、校長、教頭と教師と相談しながら、決まった学級かクラスを対象に、サポートを行います。

■“学校心理士”エーロさんの経験
私の学校での日常は生徒のカウンセリングと保護者面談が主でした。毎週来た生徒さんもいましたし、1、2回だけ来た生徒さんもいました。親や教師に勧められたから来た生徒さんが多くいましたし、時々、話したいことがあるから自ら来た生徒さんもいました。
私がいた学校では国際結婚をした家族が特に多く、会議はよく英語で行われましたし、カウンセリングや心理検査も英語で行いました(しかし、英語で会議と相談だけでなく、心理検査とカウンセリングも行うことは首都ヘルシンキ市にも少し例外のパターンです)。
また、母語がスペイン語の生徒の1人とカウンセリングをスペイン語で行い、日本人の保護者と相談と会議を日本語で行ったこともありました。仕事で多くの言語で話せるのが私の特別の喜びでした。
振り返ると、心理学者として働いた経験はとても意義深かったです。親子をサポートしながらフィンランドの家庭生活に入り込み、家族が葛藤している悩みを知り、お互いに聞きながら学んでいくことができたのは、とても大切な経験でした。