くらし 特集 もしかして認知症…?(1)

その気付きが、身近な人を支える一歩に

認知症は誰もがなり得る症状で、令和4年度推計※では65歳以上高齢者の3.6人に1人が認知症又は認知症予備軍と言われています。今月は、認知症早期発見の重要性や気付くポイント、悩んだときに気軽に話せる相談先を紹介します。
※厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」参考

■9月21日は「世界アルツハイマーデー」
知って、気付いて、相談する。認知症を一度考えてみませんか?

毎年9月21日は「世界アルツハイマーデー」。認知症の理解を深め、本人と関係する人たちが安心して暮らせる社会を目指す国際的な日です。さらに、9月全体を「世界アルツハイマー月間」として、さまざまな啓発活動が続けられています。
しかし、「最近、同じことを何度も言う」、「家計のやりくりが上手くいかなくなった」など身近な人の「ちょっと変かも?」という変化を感じながらも「年齢のせいかな」、「どうしたらいいんだろう?」と不安なまま過ごす人も少なくありません。
実は、その違和感こそ認知症の早期発見につながる大切なサインであり、ちょっとした気付きがこれからの生活を大きく変えることもあります。
「もしかして認知症かも?」と迷ったとき、一人で抱え込まず、身近な人を守るきっかけとなれば幸いです。

●「認知症」ってそもそも何だろう?
「認知症」は、脳の神経細胞の変化や脳血管の障害が原因で、脳機能が低下し、日常及び社会生活に支障をきたす状態です。例えば、「食事をしたこと自体を忘れ、食後すぐに『まだ食べていない』と催促する」など、出来事全体が抜け落ちます。
最も多いタイプが「アルツハイマー型認知症」で、脳の中で記憶や判断をする部分に、長い時間をかけて少しずつ変化が起こり、認知症が進行していきます。

●見逃さないでMCI(軽度認知障害)
▽気付きと対策が認知症予防の鍵に!
まだ耳馴染みのないMCIという言葉。「ちょっとおかしい?」、「以前とは違う」と周囲が感じる症状があるものの、日常生活には支障が出ていない状態で、認知症と診断される一歩手前の段階です。
また、症状が軽いため、知識がないと家族や自分自身でさえ見過ごしてしまう可能性がありますが、MCIのうちに発見し、早期に対策することで改善が見られたり、発症を遅らせたりできる可能性があります。
近年、認知症の進行を遅らせたり、症状を和らげたりする薬が開発されていますが、現時点では完全な治療法は確立されていません。一方、診断技術の進歩により、加齢によるもの忘れに見える場合でも、MCIや軽度の認知症の診断が可能となってきています。
こうしたことから、早期発見に努めるため、かかりつけ医を受診したり、地域包括支援センターで相談や適切な支援を受けたりすることが、認知症予防に非常に重要です。

●気付いて欲しいサイン 日常生活で見られるMCIの初期症状
・普段の生活で…
□物の名前が出にくくなった
□約束を忘れてしまうことが増えた
□趣味や外出に消極的になった

・家の中で…
□物を探し回ることが増えた
□整理整頓が難しくなり、部屋が散らかるようになった

・家の外で…
□持ち物を何度も確かめる
□運転のミスが多くなった
□慣れた道でも迷うことがある