文化 【ふるさと魅力発信】久万美術館

■菅亮平 The Long Wait (2)
館内に入るとまず初めに目に入るのが、中庭に浮かぶように設置された作品『久万山能舞台』です。
現在広島を拠点に活動する菅亮平は、被爆した能道具との出会いをきっかけに、能文化に関心を寄せるようになりました。特に注目したのが舞台空間です。能舞台の背景は「鏡板」と呼ばれ、神や仏が一時的に姿を現すとされる「影向の松」が鏡に映されたものとして描かれています。つまり演者は、客席側に降り立った神仏に向かって能を舞っているのです。
一方『久万山能舞台』には鏡板やほかの舞台装置はありません。美術館の建物や、中庭の木々から伸びる黒紐によって宙に浮くように張られた白縄は、舞台の寸法と同じ三間(約5・46m)の正方形を形作っています。また、舞台正面奥に立つ欅は、鏡板の松を想起させます。『久万山能舞台』を取り囲む周りの環境そのものが、能舞台として機能する構造となっています。
中庭には、愛媛出身の作家・多和圭三の『景色-レベル』が恒常的に設置されています。二人の作品が響き合う空間で、能舞台の新たな姿と融合した美術館の風景をご堪能ください。 (本田)

▽学芸員のつぶやき
『久万山能舞台』は、菅の構想のもと、建築家・中村竜治による設計と、アーティスト・杉井隼人による施工で完成しました。

問い合わせ:久万美術館
【電話】21‒2881【HP】http://www.kumakogen.jp/site/muse/