- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県内子町
- 広報紙名 : 広報uchiko 2025年4月号
昨年10月に開かれた新人大会大洲喜多地区予選に出場した、内子中学校野球部の皆さん。得点した選手を迎えタッチを交わすのは、内子・五十崎の両中学校の生徒たちです。
内子町では昨年8月から、部活動地域移行の一環で「拠点校方式」を一部の部活動で導入。拠点となった学校に他校からも生徒が集まり、合同で活動を行うもので、部員数が減少する中で部活動を継続していくための取り組みとして始まりました。
今回の特集では、内子町で進めている部活動地域移行の現状を紹介します。部活動に今、どのような変化が起きているのか。内子町が目指す地域移行の形を考えます。
■変化を求められる部活動 地域移行のナゼ
全国的に進められている「部活動地域移行」。活動を持続可能なものにするために、将来的には地域が主体となって取り組むことを目指しています。地域移行が進められる背景と、内子町で始まっている取り組みについて紹介します。
◇変わり始めた部活動
4年12月、スポーツ庁・文化庁から「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」が示されました。少子化などで部活動を取り巻く環境が変化する中、運営方法などの見直しが議論されてきました。
◇部活動の現状
部活動は生徒たちの体力や技術の向上だけでなく、集団活動の中で責任感や連帯感を養うなど、人間形成に大きな影響を与える機会となっています。教育面で意義のある部活動ですが、現状ではさまざまな課題もあります。
一つは、生徒数の減少です。町内中学生の生徒数は、6年度が380人でしたが、その後は減少傾向が続くと予想されています。16年度には226人と、40%以上の減少が見込まれます。特に小規模校で減少率が大きく、各学校単独での活動の維持が困難となる状況です。
二つ目は、教員の業務負担の増大です。部活動の指導を教員が務める場合、授業やその準備などの業務と並行して進めなければならず、平日の時間外や休日などの長時間勤務の要因となります。また指導はやりがいもありますが、競技の指導経験がない教員にとっては、特に大きな負担となる場合もあります。
◇内子町の取り組み
国のガイドラインを受け、内子町では5年度に「部活動地域移行推進連絡協議会」(以下、「協議会」)を組織。町内の各中学校長やPTA、指導者などが集まり、生徒たちの活動の場をどう確保していくか、丁寧に協議を重ねてきました。そして同年12月に「内子町立中学校における部活動の地域移行推進計画」を策定。6年度から部活動の一部を「拠点校方式」とし、将来的には学校外で運営を担う「地域クラブ」設立を目指す方向性を示しました。
◇「拠点校部活動」とは
拠点校部活動は、自分が通う学校にない部活動でも、町内の「拠点校」で行う活動を選べるというものです。実施主体は拠点となる各中学校で、指導者はこれまで同様に教員が中心となります。6年度は4校で17の部活が拠点校方式を実施。同時に「総合スポーツ部」「総合文化・科学部」「美術部」を新たに創設しました。生徒にとっては部活動の選択の幅が広がり、部員数が増えて活動が充実し、他校の生徒たちと交流が深まるメリットがあります。一方で、拠点校以外の生徒が参加するにはバス移動が必要となり、活動時間が少なくなるため、工夫も必要です。
◇内子が目指す「地域クラブ」
「地域クラブ活動」は、地域の団体が運営する、部活動に代わって子どもたちの活動の受け皿となるものです。指導者は地域の皆さんが中心となり、教員も希望すれば、引き続き指導に関わります。学校や教育委員会は協力団体として、運営をサポートする体制が想定されています。内子町では8年度の設立に向けて、その運営方法などの詳細を今後も議論する予定です。
地域クラブ活動で一番の課題となるのが、指導者の確保です。拠点校部活動の一部では、将来的な地域クラブ設立を見据えて、外部指導者による指導も始まっています。より専門的な内容を学ぶ機会が増えると期待されています。一方、クラブとして総体や新人戦に出場する条件を満たせるか、教育的な配慮が確保されるか、資金をどう工面するか――など、課題も残されています。
◇思いは「子どもたちのために」
当初は「自分たちの学校から部がなくなるのはさみしい」という保護者の声もありましたが、現在は拠点校方式を「やりたいことができ、ありがたい」と前向きな意見も増えています。協議会が大切にするのは、「子どもたちにとって大事なものを残す」という考え方です。生徒や保護者、学校、地域の皆さんなどの声を聞き、今後も内子町に合った部活動の形を模索していきます。
◇主役は子どもたち、まち全体でサポートする形を
内子町教育委員会
部活動地域移行推進連絡協議会
事務局 城戸玲順(あきのぶ)さん
協議会では、発足当初から各学校や地域で足並みを揃え、議論を重ねてきました。雲をつかむ状態での大きな変化となるため、多くの声を集め、内子らしい活動の形を追い求めています。メンバーは「子どもたちのために」と熱い思いを持つ人ばかり。実際、子どもたちの純粋で一生懸命に頑張る姿を目の当たりにすると、「何かしてあげたい」と大人たちの意識も変わっていきます。これから町の皆さんにも、いろいろな場面で関わってほしいです。指導者だけでなく、例えば送迎時の安全確保など、役割はたくさんあります。子どもたちのサポーターとして活躍を見守ってもらえたらうれしいです。
変化はいいチャンスだと捉えています。生徒を主役に、現在の部活動の良さを引き継ぎながら、新しい形を多くの人の手で生み出していけたらと思います。