- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県福岡市
- 広報紙名 : 福岡市政だより 令和7年11月15日号
「ユマニチュード(マルアール)」は、認知症の人とのコミュニケーションをスムーズに行うためのケア技法です。相手を思いやり、安心感を与え、信頼関係を築く「ユマニチュード」について紹介します。
市は、認知症になっても、住み慣れた地域で、自分らしく暮らせるまち「認知症フレンドリーシティ」を目指し、平成30(2018)年度からユマニチュードの普及を推進しています。
厚生労働省が令和4年度に65歳以上の高齢者を対象にした調査では、3.6人に1人が認知症およびその予備軍であることが分かりました。高齢化や核家族化が進む中、認知症や認知症の人についての理解を深めていくことが大切です。
「ユマニチュード」は、フランス語で「人間らしさを取り戻す」を意味する造語です。ケアを必要としている人の持っている力を引き出し、最期の時までその人らしくいられるようにと考案されました。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の四つを柱に、「あなたのことを大切に思っています」と伝えるための技術と考え方からできています。
南福岡脳神経外科病院の作業療法士で、ユマニチュード認定チーフインストラクターの安武澄夫さん(40)に聞きました。
ケアを行う本来の目的は、その人らしく生きられるように寄り添い、支えることです。しかし、実際には食事や着替えなどのサポートに意識が向きがちです。相手の人となりや思いを理解し、その人の特性を考えて良好な関係を築いていくことが、その人らしさを引き出すための第一歩になります。
認知症になると、記憶力や判断力が低下し、普段通りの生活ができなくなります。不安や焦り、恐怖心が生じることも多く、何度も同じことを尋ねてきたり、攻撃的な態度を取ってしまったりすることもあります。それらは、自分を安心させるため、自分を守ろうとするための行動の表れです。そうした思いを感じ取り、「一緒にいるから大丈夫よ」と言葉を掛けたり、手を握ったりして、安心してもらうことが大切です。
○心が通じるケアを
ユマニチュードを実践して、親がケアを受け入れるようになったという声もよく聞きます。私も、患者さんから反応を返してもらうことが格段に増えました。介護をする人、される人の気持ちが通じ合って、初めて効果が表れるものだと思います。
ユマニチュードは、決して難しいものではありません。その人の得意なことや趣味、大切な思い出などを会話に取り入れてみてください。心の通う穏やかな時間が流れることでしょう。
▽ユマニチュードの四つの柱
「見る」
水平に、正面から、相手の好む距離で長く目を合わせる。
「話す」
穏やかな声で、ゆっくりと、前向きな言葉を掛ける。
「触れる」
広く柔らかく、ゆっくり包み込むように触れる。つかむのではなく、下から支える。
「立つ」
1日合計20分立つことで、日常生活に必要な力を保ち、寝たきりを防げる。
▽ケアを行う際の手順
・出会いの準備…ドアやテーブルをノックし、音や振動で相手に来たことを伝える。
・ケアの準備…すぐに介護の内容を伝えず、「見る」「話す」「触れる」を通して、良好な関係を築く。
・実際のケア…目線を合わせ、穏やかな声で、四つの柱を組み合わせてケアを行う。
・過ごした時間の振り返り…「会えてうれしかった」「ありがとう」と、優しい言葉を掛ける。
・再会の約束…「また来るね」「夕方散歩に行こうね」などと言って次に会う約束をする。
問い合わせ先:ユマニチュード推進課
【電話】092-707-3117【FAX】092-733-5587
◆地域や学校でユマニチュード講座を実施
市は、一人でも多くの市民に認知症ケアについて知ってもらおうと、市独自の講師「福岡市ユマニチュード地域リーダー」を養成し、市内全ての公民館と小中学校で順次、ユマニチュード講座を実施しています。
10月に百道小学校(早良区)で、4年生を対象に講座が行われました。児童からは、「認知症になっても、周囲の助けがあれば、普段通りの生活ができることが分かりました」「認知症の人に優しく話し掛けたり触れたりすれば、私たちの気持ちが伝わるので、困っている人がいたら助けたいと思います」などの感想が聞かれました。
講師を務めたケアマネジャーの高森美香さん(58)は、「『見る』『話す』『触れる』は、人とのつながりを築く上でとても大切なこと。家庭や学校など、日々の生活に取り入れてほしいですね」と話しています。
講座の詳細は、市ホームページ(「福岡市 ユマニチュード講座」で検索)で確認するか、ユマニチュード推進課にお問い合わせください。
◆一般市民向け講座「初めて知るユマニチュード」
ユマニチュード認定インストラクターが、認知症への理解を促し、ユマニチュードの実践方法を分かりやすく伝えます。「見る」「話す」「触れる」「立つ」などの基本技術も実技を通して学びます。
日時:12月6日(土)午後2時~4時
場所:アミカスホール(南区高宮三丁目)
対象:市内に住むか、通勤・通学する人
定員:120人(先着)
料金:無料
申し込み:11月25日(火)までに申し込みを。電話でも受け付けます。
問い合わせ:日本ユマニチュード学会
【電話】03-6555-2357(平日午前10時~午後5時)
【メール】[email protected]
