健康 田川市立病院 NEWS LETTER VOL.51 秋号(1)

◆基本理念
地域(患者・かかりつけ医・住民・職員)の求めに応え、安全・安心な医療を支えます

「歩く」「動く」喜びを支えるチームがここにある
整形外科では、慢性的な関節の痛みから突然の骨折まで、あらゆる整形外科疾患に対応しています。

■整形外科[特集]「歩く」「動く」喜びを
日常の動作に痛みが生じることはQOL(生活の質や幸福度)を大きく下げ、健康寿命の低下にもつながります。今回は「立つ」「動く」動作に焦点を当て、代表的な関節疾患である「変形性関節症」とその先に起こりうる移動能力の低下「ロコモティブシンドローム」について紹介します。
◇変形性関節症って何?
歩くのに重要な役割を果たしている股関節と膝関節。その健康を脅かすのが「変形性関節症」です。
加齢・肥満・筋力低下・けがなど、さまざまな原因により関節表面の軟骨がすり減り、関節の膜(関節包)を裏打ちしている滑膜に炎症が起こります。この状態が数年から数十年続くと関節の変形を生じます。症状として、水がたまったり腫れたりして痛みを生じます。また、関節の変形により関節の動きが限られ、歩行や日常生活に困難を感じるようになります。最終的には、家の中に閉じこもりがちになり、認知症や抑うつ状態などの原因になります。

◇患者数はどれくらい?
変形性関節症は全ての関節に起こり得る病気で、膝関節が最も多く、続いて多いのが股関節と言われています。変形性関節症の患者数は全世界で5億2千800万人にのぼります。
日本では変形性膝関節症の患者数は3千万から4千万人と推定されており、毎年17万人以上の患者さんが人工関節置換術(膝と股関節)を受けています。この数は、田川市の人口の4倍に近い数で、それだけ多くの人が変形性関節症となり、日常の動作に困難を抱えていることになります。

◇どのような治療があるの?
変形性関節症の予防として、筋力訓練やストレッチが大切です。特に、下肢の変形性関節症では荷重が軟骨に負担がかかるため、過度のウエイトトレーニングは避けてください。水泳や水中ウォーキングなど、浮力がかかった状態でのトレーニングがおすすめです。
もし、すでに変形性関節症を患っている場合は、進行度合いにもよりますが、人工関節置換術をおすすめする場合があります。
当院では特に、股関節の人工関節を、筋肉を切らない低侵襲手術で行うことができます。
股関節の痛みで困っている、人工関節の手術を検討している人は、気軽に相談してください。

◇移動機能をテストしてみよう
▽両足テスト
(1)40cmの台に両腕を組んで腰かけます。
(2)両足は肩幅くらいに広げ、床に対して脛(すね)がおよそ70度(40cmの台の場合)になるようにして、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒保持します。
できなかった人は↓
「移動機能の低下が進行している状態」です

↓できた人

▽片足テスト
(1)40cmの台に両腕を組んで腰かけます。
(2)両足は肩幅くらいに広げ、床に対して脛(すね)がおよそ70度(40cmの台の場合)になるようにします。そして左右どちらかの足を上げます。このとき上げた方の足の膝は軽く曲げます。反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒保持します。
どちらか一方の片足で立ち上がれない人は↓
「移動機能の低下が始まっている状態」です

※厚生労働省ホームページ「ロコモ度テスト」より

◇変形性関節症のその先に「ロコモティブシンドローム」
ロコモティブシンドロームとは「locomotive(移動能力)」という英語からつくられた言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。ロコモとはその略称です。
人間が歩く、動くといった、日々の活動のために必要な身体の仕組み全体を運動器といいます。運動器は骨・関節・筋肉・神経などで成り立っていますが、これらの障害によって身体能力が低下してしまった状態が、ロコモです。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。
要支援、要介護になる原因のトップは転倒、骨折や関節の病気など運動器の障害です。そのため、運動器の障害を起こさせないことが重要です。

▽要支援・要介護になった原因

※運動器の障害:骨折転倒・関節疾患・脊髄損傷の合計
厚生労働省2019年国民生活基礎調査の概況より改変

◆整形外科スタッフ
連携のとれた医療チームが真摯に対応いたします!
・佐藤 太志(さとう たいし)
部長 平成16年卒
・矢部 恵士(やべ けいし)
医員 平成30年卒
・橋詰 惇(はしづめ しゅん)
医員 令和2年卒
・神崎 真一(こうざき しんいち)
医員 令和3年卒