くらし あの日の約束、今ここに

この季節になると「記録的な豪雨」や「想定外の渇水」といった極端な気象が、私たちのまちを脅かします。そして、巨大地震への懸念も…。これまで「なんとかなる」と思っていた備えが、今の時代では「もう1段ギアを上げなければ」と訴えてもよいのかもしれません。
入庁して2年目、2011年3月11日に発生した東日本大震災。まだスマートフォンも普及しておらず、情報が曖昧な中、1枚の写真に衝撃を受けました。当時、どのような経緯だったかはあまり記憶にありませんが、何かに導かれるように復興支援(派遣)という形で現地の土を踏んだことは鮮明に覚えています。
派遣された時期は、発災から約1年半後。それでも、まだまだ手付かずの瓦礫がそのまま残されており、災害の恐怖を肌で感じるには十分でした。仕事柄、たくさんの住民や職員の方と話す機会がありましたが、共通することは「人は自然には勝てない」「役所には限界がある」という言葉。最初はネガティブな意味で聞いていましたが、住民と役場の職員が絶望の中で、己の限界を認め、「それぞれが真剣に備えをしていれば」といった前向きな意味での議論だと気づきました。今では当たり前に使われますが、「減災」という言葉が広く一般にも認知されるようになったのも、被災地の経験と後悔があってこそだと感じます。
「私たち一人ひとりが意識を変えて、備えをしていれば被害はもっと減らせた。この経験を多くの人に知らせてほしい」。派遣先の役場から最後に宿題を受け取りました。あれから13年。縁あって今回の防災特集を担当することで、ようやく約束を果たせたような気がしています。記事は1つ1つを端的にし、興味がある項目だけを「見る」ことができるよう工夫をしました。より多くの方に1つだけでも目を通してもらえれば幸いです。
それでは、今月のYUKUHASHI LIFE始まります。