スポーツ 〔特集〕渡邊直子さん 日本人女性初 8000M峰14座の登頂達成

■シェルパと共に14座登頂を達成
大野城市出身の渡邊直子さんは、令和6年10月9日、中国のシシャパンマ(8027M)に登頂し、日本人女性初の8000M峰全14座登頂を果たしました。
気さくで飾らない人柄の渡邊さんにインタビューしましたので、その内容を紹介します。
なお、市では渡邊さんの功績を称え、大野城市表彰特別表彰を贈呈しました

◇14座登頂達成した時の心境は
私にとっての登山は生活の一部で、そういった意味では、1つ登頂ができたという感覚でしたが、「ほっとした」のと同時に、いろいろな人への感謝が込み上げた瞬間でもありました。

◇達成の秘訣は
私がすごいのではなく、登頂に重要なのは、登山ルートを決めるフィックスロープを張り、登山隊を先導するシェルパ(ネパールの少数民族。ヒマラヤ登山支援で有名。)です。フィックスロープを張るには、雪を掻き分ける馬力と経験、技術を必要とします。シェルパの中でもこのロープを張れる人は少なく、記録達成者に欠かせない存在であり、もっと日の目を浴びるべきだと感じてきました。
私は、苦楽を共にしてきたシェルパたちが、同じ遠征で共に14座達成したことが嬉しかったです。

◇チャレンジ精神は、何処から沸いてくるのですか
こどもの頃からの体験が大きく影響していると思います。小学校4年生のときには初めて中国に行き無人島サバイバル体験をしました。
このイベントには日本と中国のこども、あわせて192人が参加。中国語は話せませんでしたが、ジェスチャーや漢字のやり取りで、中国のこどもたちとコミュニケーションをとっていた記憶があります。その経験から、言葉が通じなくても、何とかなると感じました。その時は、けがをして離脱しましたが、その後の企画に興味を感じ参加し続けました。
小学4年では八ヶ岳雪山登山、中学1年ではパキスタンのこどもたちとパキスタンの山に行き、高山病を初めて経験。
この様な登山を含めたさまざまな体験を楽しむようになっていました。

◇渡邊さんにとって登山の魅力とは
登山は、休日のようなもの。
登山事体ではなく、シェルパとの交流や、登頂するまでの出来事などに楽しさがあります。ヒマラヤの滞在期間は、長ければ長いほどシェルパとの交流ができて楽しいと思っています。

◇シェルパ(族)の魅力とは
彼らは基本的に単純で素朴。喜怒哀楽を表現し、けんかもしますが、すぐ仲直りします。いじめは無く、すぐ仲良くなれるし、気を使わないで過ごせます。日本ではよくある「本音と建て前」のような事がなく、気を遣わなくていいところに心地よさを感じています。
彼らといると、日本人は教育されすぎて考えすぎだと思えてしまいます。
私は、シェルパ族の単純さがいいと感じています。
また、シェルパ同士で言わなくても協力しあえるし、間違ったことをした人を許す文化があります。どうしたらそうなれるのかを、彼らから学びたいと思っています。

◇登山の楽しみは他にどんなものがありますか
登山の楽しみの1つに、ハプニングを楽しむ事があります。
私は負けず嫌いで、何が何でもやり遂げたいという性格だと思っていました。
しかし、エベレストで頂上150m手前で天候が急に悪くなった時のこと、私のシェルパは、あと少しだから登頂しようと言いましたが、その時、私は冷静に状況を判断し、安全を考え登頂を断念しました。
自分の新たな一面に気付くのは、新鮮な驚きでもあります。

◇初心者でも高所登山はできますか
ベースキャンプには、コックが各国のおいしい料理を作ってくれたり、カフェがあったりと充実しています。
登山に必要な道具や食糧、酸素ボンベはシェルパが最終キャンプ地まで運び、私たちは酸素ボンベ1本だけを担いで登頂できます。初心者でも登れる8000m峰があります。
また、初心者を連れて行くときは、少し早めに現地に行き高度順応を長めにするとか、行程を変えたり、レベルの高いシェルパにお願いしたりして、登山の準備やマネジメントをしっかりします。登頂が目的ではなく、シェルパとの交流を含め、現地でしかできない経験を楽しむために行くので、命の危険を冒してまで登頂しようと思いません。

◇今後の活動や登山を通してやりたい事は
8000m峰登山は生活の一部なので、今後も続けていきます。
私が企画したヒマラヤトレッキングに参加した20代の若者たちがいました。彼女らは、普段感情が表にあまり出ないとのことでしたが、通常会えない8000m峰専属シェルパたちとの交流や、シェルパたちがルート開拓して道なき道を行くトレッキングなどがおもしろく、普段できない経験ができたと涙していました。
初めて4000m以上まで登れたことやその景色への感動もあり、涙する参加者もいました。
また、こどもたちの登山について、問い合わせや連絡も多く来ています。希望するこどもについては、できるだけ機会を逃さないようにしたいと思って参加を受け入れ、連れて行っています。
私が、ヒマラヤで変わったように、こどもたちも人生が変わる機会になるかもしれません。
私のホームタウンみたいになっていて、気心の知れたシェルパがいるヒマラヤに連れて行きたいと思っています。