文化 きゅうはく通信(182)

■南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)ととなえれば

私たちは知らず知らずのうちに「なんまんだぶ」という言葉に親しんでいます。
正確には「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と書き、「阿弥陀に帰依します」という意味を持っています。この言葉がなぜこれほどまでに言い慣わされるようになったのか。それは今から850年ほど前に活躍した僧、法然(1133~1212)に負うところが大きいかもしれません。
法然の教えはいたってシンプルでした。ただひたすらに「南無阿弥陀仏」と称(とな)えること。そうすれば誰もが阿弥陀の極楽浄土に往生できると説いて、承安5年(1175)に浄土宗を開いたのです。この易(やさ)しく、優しい教えは、貧しさや飢えに苦しむ民衆のあいだに瞬く間に広がり、多くの人々が念仏を称え、極楽浄土に憧れ、阿弥陀の来迎を待ち望んだのです。
やがて彼らは、阿弥陀の彫像や阿弥陀浄土図、来迎図を礼拝するようになります。とりわけ「早来迎(はやらいごう)」の名で呼ばれる京都・知恩院の阿弥陀二十五菩薩来迎図は、来迎図の最高峰として知られています。桜が咲き誇るなか、阿弥陀一行が来迎に向かう先にはお堂があり、合掌する僧侶が座っています。おそらくこの絵の注文者で、彼はこの絵を見て来迎を確信し、心の支えとしたのでしょう。
昨年、浄土宗は開宗から850年という節目の年を迎えました。秋の九博では、法然の教えと歴史、そして信仰のよすがとなった多くの浄土教美術の名品を紹介します。ぜひお越しください。

◆国宝 阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)京都・知恩院
前期展示:10月7日(火)~11月3日(月・祝)

九州国立博物館 広報課