くらし こがんひとこがんとこ Vol.78

◆『佐々木和智(かずとも)の作り方』
佐々木 和智さん(有限会社佐々木自動車工業 社長)

猛者(もさ)である。三十数年前、自分を強くしたいと門をたたいた空手は、今年2月の第4回極真手塚杯世界空手道選手権大会の51歳以上の組み手の部優勝、3月に開催された第33回全日本総流派空手道選手権大会では15年連続入賞記録を優勝二連覇で飾った。肉体と精神力、そして持ち前の負けず嫌いが発動しなければ還暦の年にこの結果は残せなかっただろう。

武道に秀でているだけではない。今は好業績の会社だが、最初から順調な訳ではなかった。遊びほうけていた35歳の彼が社長になる日は突然やって来た。父親が脳のう梗梗こうそくこく塞塞で倒れ、2代目として引き継いだ会社の経営はかなり厳しかった。母親は悲しむばかり。社員は守らねばならない。ふと気づくと(自称)業界一のバカ息子は奮起するしかない状況だった。中2から不登校でろくに読み書きもできず常識もない2代目は、社員に選択を委ゆだねた。「仕事は社長の俺が何としてでも取ってくる!先の見えない状況だから辞めたければ辞めてもいい」と。しかしだれ一人辞めずに残ってくれた。

眠れないほど悔しい思いもした。けんもほろろに断られ、厳しいこともたくさん言われた。しかし腐らずそれを全てビタミンに変え吸収した。鏡の前で練習をした笑顔で深々と頭を下げ、断られても背中を見せずちゃんと礼を尽くして引き上げた。いただいた仕事はどんなものでも決して断らなかった。意気込みと真真ままっ直直すすぐな人間性を見てくれたのか〝佐々木君が好きだから〟と仕事をくれたり紹介してくれる人達が現れ始めた。「人情に助けられこれまでやってこれた」と彼は心から感謝する。だからこそ「今度は自分がお返しをする番」だと。

夢は〝自分をブランド化すること〟。遊びも空手も仕事も常に全力で挑いどみ、全てに妥協せず日々生きている。今後も変わらず自分を磨き続けて人脈を広げ、支え助け合う活動※のパイプ役になりたいのだという。

人情に救われ、社員に恵まれ、温かな家族と頼れる仲間たちに支えられ、強く優しく熱い男、佐々木和智はこうして出来上がった。押忍

※コロナ禍、日本中でマスクが手に入らないとき「町工場の人間が人の命を助ける活動ができるんだ。一緒に応援してくれ!」と呼びかけると、その思いに賛同した県内外の53の事業者と個人から寄附が集まり、3万枚のマスクを市内の妊婦258人に配ることができた。
※手品も特技:初めてマジックを見たときに「これを見せたら母ちゃんが喜ぶやろう、やってあげたい」と親孝行から始めたマジック。敬老会などで披露している。

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