くらし こがんひとこがんとこ VOL81

『ハイ・ポテンシャル』
椎 翔望裕(しい かみゆ)/DJ KAMIYUさん
(福岡ソフトバンクホークス サウンドDJ)

音楽が好きな気持ちや知っている曲の数は誰にも負けない。そんな彼の「洋楽」への入り口は、母が聴いていた80・90年代のディスコミュージック。”アニメソングではなくマイケルジャクソンを好んで聴く小学生”だったそうだ。1999年生まれの彼が親世代の曲を知っていることで、DJ*1として”時代”に幅のある選曲を可能にし、ギャップ無く広い年代の人を楽しませることができる。母からもらった強力な武器に感謝だ。

DJになったきっかけは”偶然”から。飲み過ぎた友達を送った後帰れなくなり、時間つぶしに訪れた初めてのクラブ。ダンスが踊れてめいっぱい音楽を楽しめる「クラブ」に衝撃を受け、一気にドハマりした。中でも自分の好きなヒップホップがかかるクラブに通い詰めているうちにスタッフとしてスカウトされ、さらに曲の知識や感覚がDJ向きだと、とんとん拍子にクラブのDJに!

ブースに立った瞬間から、自分の持ち時間でどれほど客を気持ちよくさせ、ショーとして盛り上げられるかがDJの勝負所。彼はフロア全体の客の服装・髪型・人種・ノリ方などを冷静に観察して雰囲気を掴み、音楽を臨機応変に変えることで盛り上げてゆく。客を前にしても全く緊張しない性質(たち)がそれを可能にしている。

今年彼は、福岡ソフトバンクホークスのサウンドDJに大抜擢された。「超負けず嫌い」が死ぬ気で努力してきた結果、運を引き寄せたのかもと彼は言う。
みずほPayPayドームでは、表情が見えない4万人の客が相手。昔のメジャーな曲を馴染みやすくリミックス*2したり、ドーム全体の幅広い年齢層に楽しんでもらおうと工夫を凝らす。

「好きなことはとことんやるべき。何かを極めたければ、直接目標とする人の感覚・経験を熱量を持って聞くこと。そうすれば必ず熱量を持って返してくれる。『本当の答え』はケータイの検索ではなく、人と人との対話でこそ得られる」これが後輩たちに伝えたい彼の経験上の真実だ。

海外と違い日本では、”アーティストとしてのDJ”の認知度はまだ低い。だからこそ自分の色、唯一無二のプレイを確立させ、DJ同志で繋がり磨き合い、自身はもちろん全DJが活躍することで「DJ」という仕事をより高みで輝かせようとと意気込む。
負けず嫌いのDJ KAMIYUの快進撃はまだまだ続く。照準は世界だ!

*1:「DJ」「ディスク・ジョッキー(Disk Jockey)」の略で、音楽を選曲・再生し、聴衆を楽しませる役割を担う人
*2:「リミックス」既存の楽曲の音源を再編集し、新たなバージョンの楽曲を作り出すこと