文化 〔戦後八十年 特別企画〕この記憶を、あなたへ。(4)

◆編集を終えて
今回の特集では、野見山さんの証言を軸に、戦争の記憶をたどりました。馬来丸の沈没という事実、そしてその影にあった、残された家族の物語に触れながら、戦争がいかに暮らしに大きな影響を与えたのか、改めて感じさせられる取材となりました。
正さんの「泣く暇なんてなかった」という言葉には、当時の現実が凝縮されているように感じました。父を見送り、母を亡くし、学校に通うことを諦めて働きに出る。11歳の少年が『家を守る』ために背負ったものは、あまりにも大きくて重たいものでした。そして、父の最期の地が、久志湾沖であると知り、ようやくたどり着いた「本当の慰霊」。そこには、79年間欠かさず法要を続ける廣泉寺や、地元の人々の記憶がありました。「助けに行こうとしたが、軍に止められた」「海岸に流れ着いた兵士のそばで声をかけ続けた子どもたち」。そうした証言に触れるたび、戦争とは何か、平和とは何かを考えずにはいられません。
戦争を体験していない世代にとって、語り継がれる体験者の記憶は唯一の戦争との接点です。正さんが歩んできた人生、そして語ってくださった思いは、決して過去の話ではなく、今の私たちに『平和とは何か』『幸せとは何か』を問い直すものだと感じています。記憶を受け継ぎ、語り継ぐこと。それが、未来を守る第一歩になると信じています。
また、8月6日は広島に、8月9日は長崎に原爆が投下された日です。当日は、慰霊と平和祈念式典が行われ、8月6日午前8時15分、8月9日午前11時2分、そして、終戦の日である8月15日正午には、防災行政無線から追悼のサイレンが鳴ります。その音に耳を傾け、目を閉じて、静かに黙とうを捧げていただけたらと思います。
(広報担当:端倉)