- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県朝倉市
- 広報紙名 : 広報あさくら 第411号(令和7年5月号)
■獅子のはなし
このはなしは、ある被差別部落に伝わるものです。
昭和の初め、ある神社での事。秋祭りの際に神輿や獅子舞、笛や太鼓、毛槍といった大行列がある中、けんか旗でしか参加できない村がありました。けんか旗とは、行列の先頭で通路の両脇に立ち、篠竹に旗をつけたものを地面に打ち付け、神輿が通る前の「キヨメ」の役割を担うというものです。もともと祭りにも参加させてもらえなかった村ですが、「けんか旗なら」ということで、やっと許されていました。
その村は、何十年もの間けんか旗の役目しか持たせてもらえず、「獅子が持ちたい、獅子舞で参加したい」と、長い間思いを募らせていました。
ある時、「自分たちで獅子を買ったらいいんじゃないか」と誰ともなく言い始めましたが、他の村からの反対もあって、宮総代はその村が獅子を持って祭りに参加することを認めませんでした。村人は幾度も話し合いを持ち、長老はその度ごとに宮総代のところへ行きましたが、結果は変わりませんでした。
「こんくらいであきらめちゃいかん。子どもたちが大きくなった時に胸を張って獅子を持たるるごつ、ここであきらめたらいかんぞ」と気持ちを一つにしていく中、熱い想いは叶えられ、祭りでの獅子舞の参加が認められました。
村人はお金を出し合い、村に大きな獅子が来ることになりました。獅子は他の神社で使われていた中古の獅子でしたが、リヤカーで丸一日がかりで運び込み、やっとの思いで手に入れました。その獅子は本番以外では使わず、練習に廃棄された古い椅子を獅子頭に見立てて使うなどして大事にされ、その後の祭りでは胸を張って堂々と獅子舞をしました。
その精神は先人たちの想いと共に今も村人に脈々と受け継がれています。
問合せ:市人権・同和対策課
【電話】28-7861