- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県遠賀町
- 広報紙名 : 広報おんが『おんがのおと』 令和7年12月号
平均寿命の延びや少子化を背景に、全国的に高齢化が進行している昨今、地域の見守り・伝統文化の継承など、長年の経験・知恵をいかした活動やシルバー人材センターを通じた仕事など、社会参加を続ける高齢者が増えています。
こうした活動は、地域に安心と活力をもたらすとともに、高齢者自身の生きがいにつながっています。
しかし、高齢者の活躍する機会が広がっている一方で、虐待や介護放棄、不当な財産処分、高齢者をターゲットにした悪徳商法や詐欺など、人権がおびやかされている事例も多く発生しており、高齢者の人権擁護が今後一層、重要になっていくことは明らかです。
高齢者の人権を守るためには、加齢に伴う肉体的・精神的衰えや不安、その人の得意・不得意など、高齢者を取り巻く環境や一人一人の特性について正しく理解し、気持ちに寄り添っていくことが大切です。
■高齢者の人権侵害1 虐待
▽身体的虐待
殴る・蹴るなどの暴力、過剰な投薬
▽心理的虐待
どなる、ののしる、無視する(言葉・態度で精神的に苦痛を与える)
▽経済的虐待
必要な金銭を与えない、本人の合意なく預貯金や年金・賃金を使用する
▽ネグレクト
おむつを替えない、食事を与えない、入浴をさせない、必要な医療や介護のサービスを受けさせない
▽性的虐待
性的行為を強要する、裸にして放置する
■高齢者の人権侵害2 詐欺
▽点検商法
屋根などの「無料点検」を口実に自宅を訪問し、不安をあおって不要な修理や交換を迫る
▽レスキュー商法
水漏れや鍵の紛失など、日常生活の緊急トラブルにつけ込み、不当に高額な料金を請求する
▽国際電話詐欺
海外の番号(「+」で始まる番号)などを利用して、個人情報を聞き出す
▽フィッシング詐欺
実在する企業などをかたって、偽のメールやSMSなどで偽サイトへ誘導し、個人情報を盗み取る
■高齢者の身体的・精神的な特徴
▽筋力や持久力の低下
歩行速度が遅くなる、歩幅が狭くなり転倒のリスクが高まる
▽視力・聴力の低下
小さな文字が読みにくくなる、会話が聞き取りにくくなる
▽記憶力・判断力の低下
新しいことを覚えにくくなる、判断に時間がかかる
▽感情の変化
些細なことで落ち込みやすくなったり、怒りっぽくなったりする
■高齢者の人権侵害と認知機能の低下
高齢化の進展とともに、認知症と診断される人も増加しています。
認知症とは、加齢や病気などが原因で、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶や判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたしている状態のことです。
厚生労働省による令和4年度調査の推計では、65歳以上の人のうち、認知症の人の割合が約12%、認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)の人は約16%で、合わせると約3人に1人は認知機能低下の症状があることが分かっています。
認知症の人は、自身の状況をうまく伝えることができなかったり、周囲の意図を誤解してしまったりすることがあります。また、そういった症状や置かれている状況に対する周囲の理解不足、あるいは悪意から、心ない言葉をかけられたり、意思を無視されたり、詐欺の標的にされたりするなど、人権侵害につながっているケースもあります。
認知症の人は「何もわからない」「どうせ忘れてしまう」と思われがちですが、最近のことは忘れても、古い記憶は残っていることが多く、感情も豊かです。なにより、認知症になっても、その人らしさや尊厳は損なわれません。
認知症の人自身も混乱や不安、焦燥感などのストレスを抱えていることや認知症の症状・特徴を理解し、自尊心を傷つけないように接することが大切です。
■人権週間講演会
今回の講演会は対談形式。「若年性アルツハイマー型認知症」の当事者でありながら、自身で介護施設を立ち上げ、介護者や講師として活躍している山中しのぶさんと、同じく介護現場や講演活動などで活躍している「福岡県若年性認知症サポートセンター」センター長の阿部かおりさんが、高齢者を取り巻く環境や人権、認知症について語ります。
さまざまな困難を乗り越え、現場でたくさんの高齢者と接してきた経験や認知症当事者のリアルな声を聞くことができる貴重な機会ですので、ぜひ足を運んでください。
演題:『ひとりじゃないき』~認知症になっても「ひとりじゃない」と思える居場所をつくりたい~
日時:12/17(水)18:20-20:00[開場]17:45
場所:遠賀町中央公民館
費用:無料
その他:
・手話通訳あり
・託児あり(無料・要申込)
※申込期限12/10(水)
託児申し込み・問い合わせ:協働人権係
【電話】093-293-1242
■書籍コーナー
高齢者の人権に関する書籍を選りすぐりました!ぜひ読んでみてください。
期間:11/27(木)-12/23(火)
場所:遠賀町立図書館
■高齢者が安心して暮らすことができる社会を
高齢者は、長い人生の中で社会を支え、地域を築いてきた大切な存在です。加齢や認知機能の低下を理由にした差別や排除は、決してあってはなりません。
高齢者が人権を侵害されることなく、慣れ親しんだ地域で自分らしく暮らしていくには、周囲の人の協力が不可欠です。
たとえ認知症になったとしても、皆さんの温かい見守りと寄り添う姿勢があれば、誰もがいきいきと、安心して暮らせる社会をつくることができます。
身近なところから人権を考え、互いを尊重し合う社会を広げていきましょう。
問い合わせ:協働人権係
【電話】093-293-1242
