文化 ふるさと歴史発見

■第一四八回 安武深田遺跡
皆さんは築城インターの下に遺跡が存在したことをご存じでしょうか。安武深田遺跡といいます。
城井川西岸の扇状地に位置するこの遺跡は、福岡県や築上町によって過去に三度の発掘調査が行われており、弥生時代から古墳時代にかけての大規模な集落跡であったことがわかっています。特に昭和六十三年の発掘調査では弥生時代中期(紀元前後)の鍛冶工房跡がみられ、国内最古級の鉄文化が築上町に存在したことが判明しました。工房跡からは鉄製品や砥石などとともに吉備系の土器が出土しており、瀬戸内からのヒト・モノの移動、交流が行われていたことがうかがえます。
そのほかにも石包丁が数多く出土しており、遺跡内に旧河川と考えられる溝が検出されていることも踏まえると、水利の良い豊かな土地に営まれた大規模な農耕集落でもあったと考えられます。
ここまで安武深田遺跡の弥生時代にスポットをあてて紹介してきましたが、古墳時代および奈良時代の遺構も検出されています。城井川を挟んだ対岸には漢式土器が出土した赤幡十双遺跡、郡衙(昔の役所)跡と考えられている赤幡・森ヶ坪遺跡が所在しており、弥生時代以降も引き続き周辺の土地を利用して生活をしていたようです。
最後に、今回紹介した安武深田遺跡の近隣では現在発掘調査を行っており、弥生時代中期〜後期にかけての集落や溝跡、甕棺などが発見されています。調査が終わり次第こちらでご報告しますので、続報をお待ちください。
(文化財保護係 矢野一喜)