健康 診療所だより

◆生牡蠣摂食によるノロウイルス性胃腸炎
冬は牡蠣がおいしい季節です。ぷりんぷりんに太った牡蠣は絶品ですね。
ところで、冬はノロウイルスによる胃腸炎が増えます。激しい下痢、吐き気や発熱などの症状を来します。そして時々、その原因として牡蠣が関係していることがあります。
ノロウイルスの感染ルートは2つあります。1つはノロウイルス感染者の吐物や下痢便などから感染する場合(ヒト→ヒト)。もう1つは感染者から排泄されたノロウイルスが下水から海へと流れ、その流域に生息している二枚貝(牡蠣など)の中にこのウイルスが取り込まれます。そしてこのような牡蠣を生または十分加熱せずに食べるとノロウイルスに感染してしまうのです(ヒト→牡蠣→ヒト)。
実は私には牡蠣についての苦い思い出が残っています。約40年前のことです。北九州市内の医師会の忘年会において、刺身や生牡蠣などを食べました。そして2日後にそれまで経験したことのない激しい下痢に見舞われました。後で分かったことですが、忘年会に参加した医師(約30人)の大半が胃腸炎症状を起こしていました。今では考えられませんが、この頃は牡蠣摂食によるノロウイルス性胃腸炎は今ほど一般的に知られていなかったと思います。
それ以来、冬に激しい下痢症状で来院される患者さんに牡蠣摂食の有無を尋ねると、かなりの割合で牡蠣を摂食していることが分かりました。
ところで今でもスーパーではパック入り生食用の牡蠣が売られているようです。すべての牡蠣がノロウイルスを持っているわけではありません。しかし私は二度と生食いはしたくないですね。“牡蠣は十分に加熱して食べれば安全です”。
ノロウイルスに特効薬はありません。ノロウイルス性胃腸炎は2~3日以内に自然に治りますが、脱水がひどい場合には点滴を行います。

国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄

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