くらし 【地域特集】kon-ne 五島
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- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県
- 広報紙名 : つたえる県ながさき 第116号(令和7年12月号)
◆アコウの木と共にゲストをおもてなし
五島市小泊町 あこうハウス オーナー
サットン・ニコラスさん
五島市の福江島南部に位置する大浜地区小泊町。アメリカ出身のサットン・ニコラスさんは、この地で宿泊施設「あこうハウス」を営んでいます。敷地にはサットンさんが伐採の危機から救ったアコウの木が枝を広げ、ゲストを出迎えています。
同市出身の妻との結婚を機に9年前に移住したサットンさん。自然豊かな五島をすぐに気に入りました。アコウの木は移住後に始めた英会話教室と自宅との間にあり、トンネルのように気根(きこん)が伸びる木の下をいつも歩いていました。
2020年12月、解体業者がアコウの木の枝を切り始めている所に遭遇。驚いて事情を尋ねると、県外に住む所有者が維持管理が困難でやむなく、同じ敷地にある空き家の解体と同時に木を切り倒すことにしたと知らされました。
なくなったら絶対に後悔する―。不動産業者や解体業者に交渉を重ね、最終的に空き家を含む約730平方メートルの土地ごと購入してアコウの木を守りました。「この木は大浜の宝物の一つ。守れたことは、私の人生で一番の仕事」と話します。
木と一緒に思いがけず手に入れた空き家は築160年ほど。当初は何に使えるのか未知数で、不安でいっぱいでした。世界中を旅した経験を生かしゲストハウスとしての活用を模索。地元の人などの協力を得て、古民家の風情を残しつつ現代風にリノベーションし、4部屋・定員15人で一棟貸し切りができる「あこうハウス」を2023年6月にオープンしました。
宿泊客や地元の皆さんが集い、五島の自然や文化を楽しむ拠点に―。そんな思いで、市教育委員会で働きながら、あこうハウスや英会話教室、マリンアクティビティ事業の運営に汗を流しています。
オープンから2年。国内外から訪れるゲストは、サットンさんが守ったアコウの木を眺めながらゆったりとした時間を過ごします。最近では地元のイベントなどに活用されるようになりました。
今後は、五島の自然をより近くに感じられ、地元の人ともつながれるような体験事業を充実させていきたいと考えています。「五島にはアメリカ人のような『やってみようスピリット』を持っている人が多い。これを大事にして、みんなで五島を盛り上げたいね」。サットンさんの挑戦をアコウの木が見守っています。
◇下崎山のへトマト行事
下崎山地区に伝わる小正月行事。1月第3日曜日に、男衆が女性を乗せた大草履を担いだり、わら玉を激しく奪い合ったりして、子孫繁栄や豊漁豊作などを祈願。集落は独特の熱気に包まれます。国指定重要無形民俗文化財です。
◇山本二三美術館
五島市出身で数々の名作アニメーションを手掛けた作家、山本二三氏の絵画を展示。建物は1863年に建てられた武家屋敷「松園邸」。五島の風景を描いた「五島百景」を通じ、文化や自然を伝えています。
◆〔表紙のコト〕堂崎天主堂キリシタン資料館
1873年にキリシタン禁教が解かれ、堂崎地区には1880年に五島初の木造天主堂が建立されました。現在の赤レンガ造りの教会は1908年に完成し、日本二十六聖人に捧げられています。堂内は信仰の歴史をひもとく資料館としても一般公開されています。
歴史や文化、自然を感じるスポットを案内する「アクロス五島」の山口理事長は「冬も教会めぐりや2月、3月に開催される椿まつりなど見どころはいっぱい」と冬の五島観光の魅力を話してくれました。
場所:五島市奥浦町2019
営業:9時~17時
※11月11日~3月20日は16時閉館
※夏休み期間中は18時閉館(8月13~15日を除く)
※12月30日~1月3日休館
【電話】0959-73-0705
◆地元の麦、芋にこだわる焼酎蔵
・五島列島酒造
焼酎原料の大麦・サツマイモは100%地元産。小さな蔵なので大量生産はできませんが「五島らしさ」にこだわっています。椿の花酵母の「五島椿」や、かんころ餅の原料にもなる甘い芋を使った「五島芋」などの焼酎詰め合わせは「長崎デザインアワード2023」の大賞を受賞しました。
場所:五島市三井楽町濱ノ畔3158
【電話】0959-84-3300
※「180mlアソートセット5A」はJR長崎駅かもめ市場や五島つばき空港売店などでも販売
◆銀色に輝く 五島列島の味「キビナゴ」
・鯛福丸水産
五島列島は日本有数のキビナゴの産地です。産卵前で身が大きい5~6月と脂が乗る11~1月が旬。福江魚市場の仲卸業者、鯛福丸水産は主に島外に出荷。ふるさと納税の返礼品にも選ばれています。「キビナゴは鮮度が命、取れたてを刺身でいただくのは格別。来島して味わってみて」(同社の永田社長)
場所:五島市上大津町183-1
(仲卸のみ。小売りはしていません)
【電話】0959-72-2586
※キビナゴの刺身や鍋料理「いりやき」は島内の飲食店で味わうことができます。
◆〔地域のニューストピックを紹介〕8基の浮体式洋上風車、1月稼働へ
五島市崎山沖に国内初の浮体式洋上風力発電施設の整備が進んでいます。来年1月の稼働に向け風車が試運転に入りました。8基の風車が全て稼働すると、一般家庭約1万4,400世帯分の電力をまかなえる計画です。完成すれば五島市の再生エネルギーの比率は、太陽光などと合わせ現在の60%から80%近くまで向上します。
