- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県壱岐市
- 広報紙名 : 広報いき 2025年11月号 No.260
○壱岐高等学校ヒューマンハート部 探究チーム
宮野 幸一(みやの こういち)さん、阿比留 悠雅(あびる ゆうが)さん、吉田 勇太(よしだ ゆうた)さん、峯 颯花(みね ふうか)さん
Q:普段どのような活動をしていますか。壱岐の伝統文化に関わろうと思ったきっかけは何ですか。
探究チームとは壱岐の課題を知って自分たちの作りたい未来について取り組む部活動です。その中でフレッシュチームを結成して、壱岐島民が神社に魅力を持っているという未来を目指して活動しています。これまでは、壱岐の現状を知るために住吉神社や聖母宮にインタビューしたり、御幣(ごへい)づくり体験などの打ち合わせを住吉神社で行い、学童で実施しました。
フレッシュチームを結成したきっかけは、メンバーの1人が、中学校の職場体験で様々な神社のお祭りに行く中で、神職さんたちが神楽を舞うのをみてかっこいいと思い、神社に関する活動をしたいと考えたからです。フレッシュのメンバーは、みんな神楽のかっこよさや神社の境内の造り、神社の歴史などに魅力を感じています。
しかし神社が多い壱岐で、神社の魅力に気付いている人が少ないと感じました。神社の現状を知るために、住吉神社の神職さんにインタビューをしたところ、神社に来る人が減っていることを知りました。そこで神社に興味を持ってもらう、魅力に気付いてもらうために、職場体験から着想を得て、全年代、特に若者が気軽に短時間で体験できる「御幣づくり」をしてもらうことで、神社の魅力に気付いてもらおうと考えました。
Q:大阪万博でも、御幣づくり体験ブースを出展されたと思いますが、一番印象に残っていることは、何ですか。
万博で一番印象に残っているのは多くの人から「楽しかった」「壱岐に行ってみたい」といった興味や関心の声をたくさんいただけたことです。
御幣づくり体験に参加された方々は、実際に手を動かしながら、伝統的な神社の文化に触れ、その過程で神社や壱岐の歴史について質問されたり感想を述べられたりと非常に積極的に関わってくださいました。そうした様子を間近で見て、神社への関心や地域の魅力が非常に高まっていることを肌で感じ、とても手応えを感じました。万博での御幣づくり体験が神社を身近に感じてもらえるきっかけになっていると嬉しいです。
Q:伝統に触れた経験を、今後どのように生かしていきたいですか。
今後の目標は、これまで活動の一環として行ってきた「御幣づくり体験」をより充実した体験にしていこうと考えています。これまでに行った御幣づくり体験は、学校付近の学童と住吉神社の神職さんにご協力いただき、開催しました。反省点として「時間が足りない」「御幣を紹介するだけで神社の魅力を本当に伝えることができたのか」などが挙がりました。これらの意見を踏まえ、次に行う時には「ある程度の時間を確保し、お祓いの時間を設けてもらう」「子供たちに分かりやすく神社の魅力について語り、御幣を通して神社に興味をもってもらう」「別の学童で開催できないかを相談する」などを意識して頑張っていこうと思っています。
○住吉神社 宮司 川久保 貴司(かわくぼ たかし)さん
Q:神事で用いられる御幣には、どのような意味が込められているのでしょうか。
御幣は神様をお迎えし、お鎮まりいただくための「依(よ)り代(しろ)」としての役割を持っています。その起源は「衣食住」の「衣」、つまり着物にあります。昔は絹などの布を神様への捧げ物「幣帛(へいはく)」として納めていました。現在は紙で作るのが一般的ですが、神様への敬意が込められた大切なものです。高校生が職場体験でこの御幣作りに着目してくれたことがきっかけで、多くの方にその意味を知ってもらう良い機会となりました。
Q:今回、高校生の皆さんと活動を共にされて、いかがでしたか。
高校生の皆さんとの「御幣づくり」の活動は、他の神主たちからも非常に喜ばれました。多くの人は神楽を舞う人や太鼓を叩く人に注目しがちですが、高校生たちが祭事を支える「道具」である御幣に目を向けてくれたことに、皆が感心していました。その着眼点は、彼らが神社に対して深い興味を持ってくれている証だと感じ、大変嬉しく思いました。
若い世代がこのように伝統文化に関心を持ち、積極的に関わってくれることは、未来への大きな希望です。
Q:伝統を継承していく上での課題は何ですか。世代を超えて伝統文化を継承していくために、最も大切だと感じることは何ですか?
最大の課題は、神主の高齢化と後継者不足です。このままでは、祭りの運営はもちろん、神社そのものの存続が難しくなってしまいます。特に壱岐神楽は、神主が舞うことに本質的な意味があるため、神主の減少は深刻な問題です。また、神職だけで生計を立てることが難しいという現実も、後継者が島に戻ってきにくい一因となっています。
この課題を乗り越え、伝統を継承していくためには、若い世代に関心を持ってもらうためのきっかけ作りが最も大切だと感じています。今回の高校生との活動のように、職場体験などを通じて神社や地域の文化に直接触れてもらう機会を増やすことが重要です。
また、若い世代だけでなく、全ての人々が関わりやすい環境を整えることも必要です。昔ながらの厳格なしきたりに固執するのではなく、現代の生活様式に合わせて柔軟に対応し、「神社に行くことが苦痛だ」と感じさせない工夫が、世代を超えて伝統を繋いでいく鍵になると考えています。
問合せ:一緒に推進課 広報戦略班
【電話】48-1137
