文化 未来へつなぐ さいかい文化 Culture and Art

▽当たり前を自分ごとに。新たな気づきを
西海橋架橋70周年・国重要文化財指定5周年記念シンポジウムでコーディネーターを務める田中さんは、「土木は平和のための学問。人のため、平和のために礎を作っている」と語ります。1955年、戦後わずか10年で建設された西海橋は、佐世保と西海を結ぶ記念碑的な存在。映画「空の大怪獣ラドン」に登場し、九州の観光復興のシンボルにも。インフラとしての役割を超え、文化と歴史を体現しています。
「当たり前にそこにある橋。昔は船で命がけで渡っていた。もし橋がなかったら?」ピース文化祭では、地元の高校生らと共に西海橋を「自分ごと」として考える場を提供し、土木遺産の保存と活用をテーマに、日常の移動やインフラの価値を再認識するきっかけを作ります。
効率性重視の現代で、異なる価値観を「まぜる」ことで生まれる気づきを大切にし、障害の有無や世代を超えた交流を目指します。「互いの違いを尊重し、違いを受け入れること。自分ごととして学び、気づき、当たり前のことに感謝することが大事」と田中さんは語ります。

「文化教育政策に携わる。土木とは、平和(ピース)の礎をつくる学問です!」
〈Profile〉
田中尚人(たなかなおと)さん
熊本大学大学院 先端科学研究部 土木建築学専攻准教授。
土木史委員会委員長。専門は文化的景観保全と文化的処方。

▽西海橋クルーズで歴史と文化を体感
西海市のランドマーク、西海橋を巡るクルーズツアーは、西海市観光協会が2022年から始めた事業で、地域の歴史と文化を伝える体験観光コンテンツとなっています。
ガイドが西海橋の建設背景や周辺の地形、地域の歴史や建物について解説します。西海橋と新西海橋を下から見上げ、その構造美を堪能できる貴重な体験も見所に。かつて陸の孤島と呼ばれた地に架かる美しいアーチ橋。その背景を知ることで、さらに西海橋の魅力を体感できます。
西海橋と周辺の西海橋公園では春と秋にうず潮まつりが開催され、四季を通じて美しい景色と各種イベントを楽しむことができます。西海の丘公園から見える新旧二本の西海橋はまさに絶景。ぜひお立ち寄りください。

「構造だけではない、西海橋の魅力!」
〈Profile〉
山名英樹(やまなひでき)さん
西海市観光協会 観光振興課 課長。
2022年から団体の観光客向けに西海橋クルーズガイドツアーを始める。

▽アートには、一つの作品で人の人生を変える力がある
特定のメッセージに縛られず、観る人に自由な解釈を委ねる作品を制作する岡本さん。渡英時、自身がフランシス・ベーコンの作品に出会い衝撃を受けた経験から「一つの作品で人の人生を変えるような作品づくり」を目標に活動。ルーツである西海市の地域文化や自然と響きあいながら「納得のいく作品を創り続けること。それがモチベーション」と語ります。
海外での学びが自身の成長に繋がったことから「今、存在しているもので最高級のものを観る。スポーツ、演劇、ダンス、なんでもいい。自分は絵だった。建築も好きだったので、ガウディの建築や歴史に残るような作品を実際に観に行った。」と、自分への投資や実際に足を運んで体験することの大切さを語りました。

「最高峰のものに触れ、好きな分野を極める」
〈Profile〉
岡本泰彰(おかもとやすあき)さん
西海市出身の現代美術家。20歳で渡英し、独学で絵画制作を開始。
欧米での約15年間の活動を経て、2019年から西海市へ。