- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県長与町
- 広報紙名 : 広報ながよ 令和7年5月号
長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。
◆運動生理学から本能に触れる 習慣化しやすい運動条件の探索
看護栄養学部 栄養健康学科飛奈 卓郎 教授
日本では健康づくりに必要な運動量が1989年に策定されました。その後、1日の歩数の目標を10,000歩(健康日本21)、9,000歩または8,500歩(男性と女性)(健康日本21(第二次))、現在では1日8,000歩(成人)(健康日本21(第三次))とするメッセージが出されていますが、日本人の歩数は減少を続けています。これが36年間の歴史です。
私も県内市町の健康教室の講師として声をかけていただくことがあります。運動を習慣化できた人や、メタボリックシンドロームからマラソン・ランナーへ転身する姿も見てきて、疑問に思いました。市民ランナーは何故 運動が続くのでしょうか?私も週5日はジョギングをしていますが「習慣だから」という理由以外はよく分かりません。安全な飲み物・食べ物と寝床があるのにハムスターはホイールがあれば走りますし、マウスは1日で5~7kmも走ります。犬もお散歩が好きなようです。ヒト以外の動物とお話ができれば聞いてみたいのですが、「身体を動かしたい」という本能的な何かがありそうです。
ところで運動によって高揚感・爽快感・鎮静作用が得られた状態は「ランナーズ・ハイ」と呼ばれています。これは運動によって内因性カンナビノイドという物質が体内で合成されて、神経細胞へ作用するためだと考えられています。市民ランナーも上記の動物たちも、この高揚感・爽快感・鎮静作用を欲して運動をしているかもしれません。「ランナーズ・ハイ」が起こりやすい運動条件は習慣化に繋がりやすく、またメンタルヘルスの向上にも有効であると考えて、その条件を探索しています。運動中の気分の変化だけではなく、提供された血液の精製・濃縮・分離・検出といった生化学的な分析手法も用いています。
本学の前身である長崎県立女子短期大学には体育科があり、その流れを受けて栄養健康学科では運動と健康についても学ぶことができる体制になっています。食べたい飲みたい欲求(本能)と運動したい欲求(本能)でバランスを取って、健康的な健康づくりが提案できるように、運動生理学という分野からアプローチをしています。