- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県波佐見町
- 広報紙名 : 広報はさみ 令和7年4月号
◆痛み止めとの向き合い方
八並整形外科・リハビリテーション医院 八並 幹
整形外科は痛みと向き合う診療科です。関節痛、神経痛、筋肉痛等様々な痛みを抱えて患者さんが来院されます。痛みを緩和して皆さんの日常生活上のストレスを軽くする事が整形外科医の使命です。その際に最もよく使うのが痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛薬、以下NSAIDs)です。日々の診療で処方しており相棒といっても差しつかえない存在です。様々な痛みに対して安定した効果が期待できる有効な薬剤と言えます。ただ副作用もあり、重篤化する事があるため注意を要します
1つは胃粘膜障害です。NSAIDsにより胃粘膜が刺激を受け、胃炎や胃潰瘍を生じる事があります。最悪の場合は穿孔(胃に穴が開く事)を起こして手術を要する事もあるので注意を要します。胃粘膜保護薬等を予防的に処方して受診される度に胃の不快感が内科を必ず確認し、症状があれば減量、刺激の少ない薬剤への変更、もしくは投与を中止します。
もう1つは腎機能障害です。元々加齢とともに腎機能は徐々に低下します。腎機能以下の原因としては高血圧症、脂質代謝異常といった生活習慣病や喫煙、飲酒といった嗜好品の摂取もNSAIDsもその原因の一つに挙げられます。具体的にはNSAIDsは腎臓の血流低下を生じる作用があり、腎機能の低下した方に投与する事で更なる腎機能悪化を招く恐れがあります。
治療薬で患者さんの状態悪化を招くのは本末転倒になりますので、日々の診療においては、特に中高年の方には内臓の障害を指摘された事が無いかを必ず聞くようにしています。お薬手帳を確認する事である程度の把握はできますが腎機能の評価でベストなのは採血で確認する事です。かかりつけ医での採血や検診の結果があれば次の受診の時に持ってきて下さい。かかりつけ医がない、もしくは採血を殆どされていない方に対しては当院で採血を行い評価します。腎機能低下を認めた場合はNSAIDsと系統が異なる機能の影響が少ない薬剤に切り替えて疼痛の軽減に努めます。
個々の患者さんの状況に応じて薬剤を使い分ける事で疼痛の軽減を図り、日常生活上の支障、ストレスの緩和を目指しておりますので痛みで気になることがあれば整形外科に御相談下さい。