- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県和水町
- 広報紙名 : 広報なごみ 2025年4月号
■1 短歌に込めた思い
遠い日にすてた勉強とりもどす 地団駄踏んで今学ぶ
この作品は、中学校を卒業してすぐに社会に出て働かなければならなかったために、一念発起し56歳で定時制高校に入学した桜井幸子さん(仮名)が、自身の高校生活の日々を詠んだ短歌です。悪戦苦闘しながらも、学ぶ喜びがストレートに伝わってくる歌だと思います。
そんな学校生活の一コマです。次の授業の教室に向かっていた桜井さんは「桜井さん、桜井さん!」と声を掛けられ呼び止められます。「あた、幾つな?」「あた、ここに何しぎゃ来たつな?」と続け様に問う一人の教師に対して「ここは、何するところな!」と返されました。
このエピソードは、私たちに色々なことを気付かせてくれます。問いを発した教師は、定時制高校の生徒は、10代や20代の若者であるはずだという、一面的なものの見方をしていることが分かります。そして、そんな決めつけや心ない言葉に対する、桜井さんの、学ぶために、自分を取り戻すために学校に通うという明確な目的意識や教師のおかしな問いに臆することなく毅然と返していく、偏見や差別に負けない強さも伺い知れます。
■2 人生、いつでもやり直せる
学ぶことは何歳からでも始められること、さらに定時制高校や通信制高校、そして夜間中学校には様々な年齢の人たちが通っていること、「学ぶことは生きること」なのだと、私たちに教えてくれてもいます。人生百年時代と言われる昨今、自分の周囲の教育環境を見つめてみるのも大事なことかもしれません。幾つになっても、いつからでも、人生をやり直せる、新たな人生を踏み出せる、そんな社会であってほしいと思います。
また、世界には、女性が学ぶことを禁止されていたり、子どもは重要な働き手で学校にも通えなかったり、という地域や国もあります。教育環境における人権について考えを巡らせてみるのも大事なことかもしれません。
問合せ:社会教育課 地域人権教育指導員
【電話】0968・86・2022