くらし 人権コラム 心、豊かに

12月4日~10日は「人権週間」です。
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■「トゲ」のない距離
寒い冬の日、ヤマアラシは暖を取るため互いの身体を寄せ合いますが、互いのトゲで傷つけ合ってしまいます。「離れてしまうと寒さに耐え切れず、近づけば傷つく」という葛藤に苦しむヤマアラシは、近づいたり離れたりを繰り返し、ついには互いを傷つけず、暖め合うことができる距離を発見し、「調和」を見い出します。
外敵から身を守るため身体に無数のトゲを持つ「ヤマアラシ」。哲学者ショーペンハウアーの寓話(ぐうわ)に出てくる出来事をアメリカの精神分析医ベラックが「ヤマアラシのジレンマ(ヤマアラシ症候群)」と名付け、人間社会の関係性のあり方になぞらえています。
常に誰かに評価され、ときには批判を受ける風潮の中では、自分を守るために「ヤマアラシ症候群」に陥りやすくなるという指摘があります。コミュニケーションを図ろうとするが、それが上手くいかず、他人から攻撃される(傷つけられる)ことを極度に恐れ、傷つく前に自分を守るため、先に相手を攻撃したり排斥したりし、結果として周囲から孤立してしまうといった実態がその一例です。
そもそも、他者との良好な(信頼できる)関係を築くためには一定のリスクがあることを承知し、他者を尊重し傷つけないような心構えが必要であることを認識しておかなければいけません。
そのうえで、互いに適度な距離を保つことが、「共存体制」を持続させるカギとなります。例えば、言論の自由という基本的人権は、自分の意見を表明する権利が保証されたものですが、その一方で、自分の意見が他者を傷つける可能性があることから、この「自由」に係る取り扱いは多くの場面で問題視されています。
他者の人権を尊重するにあたっては、自分の選択や行動が人間関係に与える影響について、理解を深めることが大切です。自分自身の権利を守ると同時に、全体の「調和」を図ることが、真の人権社会の実現につながるのではないでしょうか。

問合せ:人権啓発センター
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