- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年8月号
■ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染症について
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とは、胃の中で生息することができる唯一の菌で「べん毛」といわれる長いしっぽのような物を持っており、それをヘリコプターのように回転させて胃粘膜表面を動きまわることができ、その形からヘリコバクター・ピロリと名付けられました。ピロリ菌は主に口からの感染(経口感染)であり、幼少期に感染してしまうことが多いのです。日本におけるピロリ菌感染率は約40%といわれています。ピロリ菌に感染すると胃粘膜が傷つけられ、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの原因となります。またピロリ菌の陽性者は陰性者に比べ胃がんリスクが5倍になると報告されています。症状としては胃部不快感・胃もたれ・吐き気・みぞおちの痛みなどの症状が現れることがあります。ピロリ菌に感染しているかどうかの検査方法は、胃カメラを使用する方法と胃カメラを使用しない方法があります。胃カメラを使用する場合、炎症や潰瘍や腫瘍がないかなど観察しピロリ菌感染が疑われた場合、胃粘膜組織を採取し、ウレアーゼテスト(ピロリ菌が産生するウレアーゼを検出する検査)、組織鏡検法(顕微鏡で観察)、培養法(培養してピロリ菌の増殖を調べる)などを行います。また胃カメラを使用しない場合の検査としては、尿素呼気試験(ピロリ菌により分解された尿素量を呼気で調べる)、便中抗原検査(便中のピロリ抗原の有無を調べる)、血中・尿中抗体検査(ピロリ菌感染によりできる抗体量を調べる)という検査法がありますが、複数の検査方法を組み合わせることでより正確な診断が可能になります。ピロリ菌に感染していた場合、ピロリ菌をやっつける除菌療法が推奨されており、除菌薬を7日間服用します。その後ピロリ菌が消えたかどうかの治療効果判定を4~8週間後に尿素呼気試験、便中抗原検査で判定します。この際、胃カメラは必要ありませんが胃潰瘍や十二指腸潰瘍を認めていた患者様は潰瘍の経過を診るために胃カメラをする場合があります。初回の除菌療法(1次除菌)でピロリ菌を除菌できなかった場合には、除菌薬を変更して2度目の除菌(2次除菌)を行います。1次除菌の除菌成功率は約70~80%、2次除菌まで行った場合の除菌成功率は97~98%といわれています。除菌成功後の再感染についてですが、年に約1~2%と考えられています。ピロリ菌除菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん予防に効果的で除菌により胃がんリスクは、ほぼ半減すると考えられていますが、胃がんリスクがゼロになるわけではないため定期的な胃カメラ検査、胃がん検診を受けましょう。
今月のドクター:指宿医師会 赤崎 安宣(あかさきやすのぶ)
問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820