文化 たるみず歴史・文化散歩 第66回

■垂水・食の歳時記「浜だご」
○垂水と浜だご
大昔の人は、人が死ぬとその霊は天に昇り月の世界に安らぎ給うと考え、人の死を「昇天」、あるいは「黄泉(よみ)の旅」と言いました。黄泉とは月の事で、月の光が黄色を帯びる事から黄泉の語が起こったといわれます。
昔、天照大神(あまてらすおおみかみ)は月読命(つくよみのみこと)に命じて、先祖の霊を慰めるため月の世界へ使者として派遣しました。月読命は元日に出発され十二日に月に到着し、無事任務を果たして十三日に月を出発して帰途につかれ、二十三日に都にお帰りになりました。大神に任を果たした事を報告されたので、大神はその労をねぎらって祝宴を催されました。この神話に基き、旧暦十二日を十二夜待ち、二十三日を二十三夜待ちといって祖先の霊を慰める祭日としました。参加者の皆で夜半まで起きていて、月の出を待つという行事でした。
明治になってからは、戦場にある兵士達の武運長久を祈願する日となり、また親兄弟、その他親族が他県にある時は、その人々の健康を祈願する日となりました。
さらに、二十三夜待ちは婦人の寄り合いの日とされ、食べ物を作って神前、霊前に供え、皆でお茶を飲みながら月の出を待つ風習がありました。この二十三夜待ちは一月、五月、九月が盛んに行われました。昔はどの集落でもありましたが、今でも柊原地区、新城地区に「浜だご」というお団子料理として残っています。
10年ほど前、NPO法人まちづくりたるみずが運営していた資料館で「いきいきサロン」というイベントをしているとき、当時80代の方が「浜だご」を作ってきてくださいました。その方のお母様が新城地区出身で、よく作ってくれたとのことでした。
筆者自身も、若い頃に柊原地区出身の方に「浜だご」を食べさせてもらったことがあります。綺麗に重箱に詰めてあったのがとても印象的でした。
最後に、「浜だご」のレシピをご紹介いたします。記事を読まれて興味が湧いた方はぜひお試しください。

◆「浜だご」の作り方
▽材料:比率
さつまいも:3
だんご粉:1
あん:お好みの量

(1)さつまいもをふかし、熱いうちに潰す。
(2)つぶした中にだんご粉を適量いれ、直径6~7cmの棒状にして、蒸し器で20分程蒸す。
(3)蒸しあがった団子を糸で切り、粒あんをまぶし、23個重箱につめて食卓やお客さんに出します。

〔参考〕
『私たちの垂水柊原編』著/中島信夫
『垂水市史料集(十一)柊原編』発行/垂水市史料集編纂委員会(1994)